中国にとっても今年は「激動の年」だった。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が振り返る。
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12月も下旬となり中国でも2014年を振り返る行事が相次いでいる。そんななか今年一年を代表する流行語ベスト・テンが発表されて話題となった。興味深かったのは、国が定めたベスト・テンと民間(ネットなどが中心となって調べたもの)のベスト・テンでは、その内容が大きく異なったことだ。
いずれも「人民ネット(民間の方は『人民日報海外版にも掲載』)」が掲載している。
まず国の方を並べて見ると、1位から順に、「依法治国」(法によって国を治める)、「失連」(行方不明となったマレーシア航空機の問題で使われた消息不明の言葉)、「北京APEC」、「埃博拉」(エボラ出血熱)、「一帯一路」(シルクロード経済ベルト構想と21世紀海のシルクロード構想の2つを指す言葉)、「巴西世界杯」(サッカーブラジルワールドカップ)、「濾港通」(上海と香港の株式市場相互乗り入れ制度)、「占中」(香港の「セントラルを占拠せよ」運動)、「国家公祭日」(南京大虐殺犠牲者国家追悼日)、「嫦娥五号」(中国の月探査機)となった。
国という目線は強く感じられるが、まあ「なるほど」と納得できる内容だろう。
では民間の方はどうなったのか。こちらも1位から並べて見よう。
1位「頂層設計(トップダウンの意味で習近平の強いリーダーシップを表現した言葉とされる)」、「新常態」(ポスト高度経済成長の少し落ち着いた状態を指す)、「打虎拍蝿(反腐敗キャンペーンのスローガンで「トラもハエも叩く」)」、「断崖式」(断崖のように突如として変化すること。最近では役人の降格人事などでよく使われる)、「你懂的(2014年3月の全国政治協商会議のスポークスマンが、取り調べ中の周永康について質問され「あなたも知っているでしょう?」と答えて失笑をかった事件から流行語に)」、「断舎离」(ダンシャリ)、「失連」、「神器」(使えるグッズを指して使われる言葉。流行のきっかけは自分を写メするときに使う日本製の器具に対するネット上での評価から)、「高大上」(女性が結婚相手を選ぶ条件。日本の「3高」と同じ)、「萌萌噠」(いわゆる日本のオタク文化が生んだ「萌え」である)
民間のベスト・テンになるとかなり日本の影響が見られるのは面白い。
このほか番外編として科学用語のベスト・テンというのも見つかるが、APECの期間中だけ見られた青空を指して使われた「APECブルー」などの言葉が入ったが、第5位に日本人の「小保方晴子」という個人名が入っていた。中国でも大ニュースだったのだ。