綱紀粛正が進む中国、「宝くじ」もその対象となるようだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。
* * *
中国はもともと射幸心の強い社会である。中国人の博奕好きはつとに有名だが、それを国内で公然とできない庶民の楽しみは彩票(宝くじ)である。
だが、この地方政府が運営する宝くじは、かねてから運営の不透明性に対する批判がささやかれてきた。
そんな折も折、11月末のCCTV(中国中央テレビ)の番組、『中国新聞』は、国家会計審査院が宝くじを徹底して審査すると伝えて反響を呼んだ。同番組でも空くじの現状は、〈公平性、透明性、真実性に疑問が投げかけられてきた〉として紹介している。金の使い道についてはどんぶり勘定がまかり通ってきた中国において、宝くじにこうした疑問が向けられるのは、むしろ当然の成り行きでもあった。
同時に、これを機に国内の多くのメディアも宝くじの実態について特集を組み、その人気の高さを大々的に報じたのだった。
財政部の資料によれば、2013年に中国全土で販売された宝くじの総額は、約3093億元(約5.9兆円。うち福祉関係が1765億元。スポーツ関係が1328億元)という。この勢いは2014年にも継続され、今年10月までの売り上げは3121億元で前年同期比24%の増加となった。
だが、この10年間で見る伸び率はさらに凄まじく、10年で8倍(累計で1兆7000億元。増加率の平均は23%)にもなっているのだ。
この盛況を背景に、一部の運営には収支をきちんと報告、公表していないなどの不透明な問題が指摘されている。
前出のCCTVは、山東省では省内10市が宝くじを発売しているが、〈売上金のうちのうち2億元が国庫に納められていない〉と伝えている。また、別の運営機関では、〈約1億2千万元の資金が不正に株式市場に流れていた〉とも指摘された。
今後、会計審査は全国18の省に対して行われ、1か月後にその結果が公表されるという。