尖閣をはじめとする周辺国との領土問題、少数民族への苛烈な弾圧世界第2位の経済大国とは思えない中国のふるまいは、果たしてどこから来るのか。他人の物まで奪い取る、その拡大志向に潜む思想を、京都府立大学准教授の岡本隆司氏が読み解く。
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習近平国家主席の唱える「中華民族の復興」は、清代の「中華帝国」を理想としている。中国が中心だった「前近代」の世界秩序を東アジアで復活させるという意思表示であり、近年の旺盛な海洋進出はその表れである。
日本も例外ではない。この秩序に見合う盟主の座を求める中国は日本に対し、尖閣諸島の領有を宣言し、さらに沖縄の帰属を「未解決」と主張する論文まで発表された。かつて中国に朝貢した琉球は「属国」であるという中華思想に基づく領土認識だ。
経済大国でありながら中国は今も国民国家を形成する途上にある。13億の人民を束ねるため、共産党政権は領土問題や歴史認識で、「反日」を軸にして愛国心・自尊心を植えつけた。
だが今や、その自尊心は政府のコントロールすら利かないほど燃え上がり、政府は領土問題で一歩も譲歩できない。11月の日中首脳会談で安倍首相と握手をした習近平の強ばった顔は人民からの強烈な圧力の賜物である。
上下の関係がDNAに組み込まれた中国では、内外ともに「法の下の平等」は、簡単には成り立たない。そんな国が膨大な国土と人口をかかえて、本当に近代的な国民国家となれるのか。先祖返りを続ける中国のリスクは、当面なくなりそうもない。
距離が近く、風貌が似ていて漢字を使うため、中国人のメンタリティを日本人の感覚で理解できるという考えは改めるべきだ。日本とはまるで異なる中国の言説や行動のパターンを、思想をベースにとらえ、万全の対策を講じる必要がある。
※SAPIO2015年1月号