終の棲家として、注目の「高齢者ホーム」だが、果たしてよい高齢者ホームとは、どんな施設なのか。「高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)」主催、高齢者施設事業者など「高齢者ホームのプロ」21人が選考した「リビング・オブ・ザ・イヤー2014」に選ばれた、優良施設を実際に訪問してみよう。ここで紹介するのは、同賞の優秀賞に輝いたサービス付き高齢者向け住宅「和楽久シニアレジデンス長津田」(神奈川県横浜市)だ。
ボランティアの活動がとても盛んなサ高住だ。手品や大正琴演奏、ハープ演奏、フラダンスなどの催しが月に3回行なわれている。取材当日のイベントは合唱だった。ほとんどの入居者が参加し、ボランティアとともに楽しそうに歌っていた。
見晴らしのいい屋上にはボランティアが草花を育てたイングリッシュガーデンがあり、入居者たちを和ませている。
同施設は、認知症の祖父が施設で拘束されながら介護を受けていたのを見た代表が、「ありのままを受け止める、自然な介護の大切さを感じて」実家を建て直して設立した。
認知症のケアも一工夫。徘徊したり、大声を出したりする原因をそれまでの人生経験に照らし合わせて理解し、共感して接する「バリデーション療法」を取り入れる。
小規模施設にもかかわらず、各居室の風呂に加えて、寝たきりや車椅子の人でも入れる機械浴や、介護の必要がある人でも入れる浴槽も設置されている。
ここでは先進的なシステムも導入している。各居室の部屋全体が見渡せる位置にiPadが設置され、緊急コールを鳴らすと職員とすぐにテレビ電話がつながる「楽コールシステム」である。
施設のスタッフは、テレビ電話で入居者の様子を直接確認して緊急性を判断できる。そうした設備がもたらす安心感が決め手となってこの施設に入居した人も多いという。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号