国内

職員も迷う皇居の吹上御苑 かつて9Hのゴルフ場が存在した

 日の丸を振る人々で皇居が賑わう季節がやってきた。12月23日の天皇誕生日の一般参賀に続き、1月2日には新年一般参賀が行なわれる。現在の皇居の歴史はかつて江戸城であったこの場所に1868(明治元)年に明治天皇が京都御所から移り住んでから始まり、天皇の公務や宮中祭祀などが行なわれてきた。

 かつて江戸城本丸があった「東御苑」、宮殿や宮内庁庁舎などがある「西の丸」、天皇・皇后の住まいがある「吹上御苑」、そして現在は玉砂利が敷き詰められた公園として公開されている「外苑」の4エリアに分かれる。

 東御苑の西側に位置する吹上御苑には、天皇・皇后が住む吹上御所がある。

 他には昭和天皇と香淳皇后が暮らした吹上大宮御所、戦時中の防空施設だった御文庫などもある。神道学者の高森明勅氏が解説する。

「戦前の昭和天皇の住居は空襲で焼失してしまったため、戦後しばらく御文庫にお住まいになられた。ほとんど日が当たらず住環境としては劣悪だったそうですが、国民生活の復興が先として、新しい御所(現在の吹上大宮御所)が完成するまで16年間住まわれました」

 かつては尾張、紀伊、水戸の徳川御三家などの大名屋敷が建ち並び、その時代につくられた日本庭園の名残もあるが、自然のままにしたいという昭和天皇の意向から、大部分は江戸時代に植えられた樹木がほぼ自然の状態で生い茂っている。都心とは信じられない鬱蒼(うっそう)とした森で、宮内庁庭園課の職員も迷うことがあるという。

「かつて9ホールのゴルフ場もありました。しかし、1937年に昭和天皇がゴルフを止めると宣言されてから、その場所もやがて森になりました。戦争の時勢の中で、ゴルフ取り止めをお決めになったのです」(高森氏)

 基本的に吹上御苑は一般開放されないが、自然を国民とともに楽しみたいという天皇・皇后の意向により、毎年5月(中学生以上が対象の日と小学4~6年生が対象の日の2回)と11月(70歳以上が対象の1回)に自然観察会が開催されている。

 吹上御苑には、ニュースで「天皇陛下の御田植」として報じられる水田がある。御田植は昭和天皇が1927年に始めたもので、収穫された米は伊勢神宮に送られ、新嘗祭(にいなめさい)にも使用される。

「現在も陛下自らがうるち米『ニホンマサリ』ともち米『マンゲツモチ』をそれぞれ100株ずつ栽培されています」(高森氏)

※週刊ポスト2015年1月1・9日号

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン