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石田衣良氏「弱肉強食化が進む」と指摘 考える自由得るには

直木賞作家・石田衣良氏

「NEWSポストセブン」恒例の直木賞作家・石田衣良氏の年頭インタビューをお届けする。2015年、会社組織からスピンアウトした生き方を考える。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 今年は世界全体でさらに弱肉強食化が進むでしょう。

 ピケティ教授が「働いて得る利益よりは資本の利益の方が大きい」といっていますが、実際にそうなんですよ。いま非正規で働いている人は、働きながら投資家にならざるを得ないんじゃないかと思う。もうダメですよ、誰かに助けて貰おうとか会社に大目に見て貰おうとか考えてちゃ。自分で自分で助けるための武器をなんとか見つけて欲しいですね。

 少数派がうまくいって、そうでない人が沈んでいく。この問題に世界中の政治家でうまく回答だせた人はいなくて、みんな失敗しているんですよね。この大きな流れの中でいかに個を守るか。その上でなにか新しい連帯をどう探すか大きなテーマですね。

 連帯とは単純にいえば、再分配機能をどうするか。共産党は大企業や金持ちから金を搾り取ればいいといってますが、あれは経済のことが全然わかっていない。日本の収入1億円以上の人の税金を80%にしたって、無駄なんですよね。極端なことをいうと、普通の庶民の税金をガンとあげるしかないでしょうね(笑)。

 消費税を上げて所得税を北欧並みにして再分配機能をがちっとすれば、みんなそれなりに安心して食えるけれど、でも日本は普通の人が50%、60%の税金を払う国で働けるか心配ですけれどね。

 去年年末の衆議院総選挙で安倍さんが言った通り、今の日本は「この道しかない」というチキンレースですごい壁に向かって思い切りアクセルを踏んでいる。円安でもなく株高ではなければ今よりもっとひどいことになっているので、それよりマシだということで選挙はあの選択になったんでしょう。でもこの先に何が待っているのかわからない。

 選挙に関しては、僕は前回に引き続き「選挙の見えざる手の賢さ」を示したと思うんですよ。アベノミクスには悪くない結果ですが、憲法改正は許さないよという。バランスの中心にあるのは財布です。

 「憲法改正」と当人は言いたがるでしょうけれど、いちばん反発するのはマーケットになるので、もしそういうことをいえば株価がガンと下がります。この政権は株価が下がれば支持率もガッと下がりますから。そこらへんは投票ではなくて株価のチェック機能が働くと思います。間違いなく政権の人はドル円の為替と株価はチェックしている。それは今の勢いに対する評価ですから。

 僕自身も今、投資をしているので、場帳(日々の値動きを記録したノート)に日経平均の記録を毎日付けています。去年の9月から10月は凄かった。僕はマイナス1000万円までいったんですが、例の日銀バズーカでマイナス1000万円からプラス500万まで戻しました。

 こういうのは昨日今日から始めたことではなくて、30年前からやってます。20歳のときに資本市場から直接カネを引っ張って、あとは本を読んで生きようとか思ってた。当時そんな20歳は珍しいけど、今は必要な考えだと思うなあ。

 お金のなにが素晴らしいかといえば、独立と自由を与えてくれることです。この社会の商習慣、取引から独立していられる。生きる自由とは考える自由でもあるということ。

 僕も仕事からいろんなマスコミの人と付き合いがありますが、みなさんそれぞれの会社のカラーに染まっています。朝日の人も読売の人も変わらない。東大の教授でも公務員感がありますから。そうやって自分と自分の組織を同一化するというのが日本人のこれまでの生き方だったので、そういうところから完全に自立するには経済的に自立するしかないんですよ。組織から究極に切れるのは自分で生きるしかない。それを確保した上での思想であったり、生き方であったりする。自由を担保するのは難しいですが。

 いやあ、マーケットの話は面白いんだけどなあ。

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