よい高齢者ホームとは、どんな施設なのか。「高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)」主催、高齢者施設事業者など「高齢者ホームのプロ」21人が選考した「リビング・オブ・ザ・イヤー2014」に選ばれた、優良施設を実際に訪問してみよう。ここで紹介するのは、同賞の優秀賞に輝いたサービス付き高齢者向け住宅「サボテン六高台」(千葉県松戸市)だ。
「重度障害者や介護が必要な人が安心して暮らせる施設がない。それなら自分たちで作ろう!」
看護師をしていた佐塚みさ子氏が一念発起。仲間を集めて開設したのがこの施設だ。1階の専用居室では、介護度が高い人のほか障害者、難病患者などを受け入れている。他施設では受け入れてもらえないことが多い、胃ろうや人工呼吸器などの処置が必要なケースでも対応可能。居室にバッテリーを設置し、突然の停電にも備える。
医療処置の必要ない入居者らも暮らす2階と、共用のリビング、ダイニングなどがある3階には全面床暖房が設置されている。足元から冷えないようにするための配慮だ。
この施設では、看護師もヘルパーも同じ制服を着用している。それにはこんな狙いがある。
「制服を分けてしまうと、どうしても意識に差が出てしまうことがあります。職員全員で入居者のみなさんの生活を支えようという思いを込めています」(佐塚氏)
医療処置が必要な人も利用できるデイサービスも併設されており、月に2回の宿泊が可能なため、近隣住民から喜ばれているという。入居者が語る。
「食事もちょうどいい薄味でおいしいですね。お菓子を毎日3時に持ち寄ってみんなとお話ししたり、塗り絵や書道をしたり、楽しく過ごしています」
小さな施設だからこそ実現できる、家族のような温かい空間があった。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号