国際情報

中国で性犯罪の重大事件相次ぐ 罪名として「姦通」使用開始

 事件には事欠かない中国においても最近特に目立ってきているのが「性犯罪」である。拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 中国のネットで見つかる昨年の流行語のあれこれのなかに、一風変わったランキングがある。題して、「2014年の性犯罪流行語ベスト・テン」である。昨年、中国で起きた性に絡む問題や事件に絡み、中国社会で頻繁に使われた言葉に対して順位をつけたものだ。

 説明よりも先にざっと並べて見よう。

【1位】性風俗取締りが全国を席巻
 これは東莞市で行われた大規模な性産業に対する摘発以来、全国に波及した取締りの波を指す。当時、中国にとどまらず世界の〝性都〟と呼ばれた東莞市の繁栄ぶりとそこにメスが入れられた衝撃が全国に走った。

【2位】姦通が罪名として正式に使われる
 かつて中国の公式文書で姦通という言葉が罪名として使われることはなかった。だが、いまでは規律検査委員会も公安部も正式な罪名として文書に残すようになった。これは中国社会の大きな変化として捕えられている。また、姦通が市民権を得ると同時に愛人に対する暴力事件も激増した。

【3位】性解放論者の受難
 セックスに対してより開放的な考え方を持つべきと訴えてきた大学教授などが、性に対して保守的な考えを持つ勢力から強い攻撃を受けたことが社会問題となった。2月には中国のサイト「反色情ネット」上に性解放論者に対する長文の反論が掲載されて火がつき、11月にはその代表的な存在とされた彭暁輝教授が広州市での講演中に糞尿をかけられるという事件も起きた。

【4位】大学で相次いだ教え子妊娠事件
 北京大学や廈門大学で、教え子を妊娠させるという事件が相次いだことで社会問題化して、大きな論争が巻き起こった。

【5位】〝女徳〟を重んじる伝統の復活
 3位の問題と重なるが、一部に古き良き中国の伝統を女性の道徳という点から取り戻そうとする運動が盛んになった。

【6位】道徳模範の性転換
 かつて道徳の模範として表彰された人物が性転換を決意したことから、当局から「道徳模範を返上しろ」と迫られて大きな老荘を巻き起こした。

【7位】ゲイ経済の活況
 中国でいまゲイに対する産業が盛んになっていることから生まれた現象。「粉紅」(ピンク色)と「同志」はいまや公然と使われる同性愛者たちの隠語である。

【8位】同性愛者の権利意識の高まり
 重慶で同性愛者が起こした訴訟が話題に。訴えられたのは重慶市と同市のカウンセラー。カウンセラーは、同性愛を病気とし、電気ショックで治療を試みたが、逆に訴えられて敗訴した。

【9位】清掃業における性差別訴訟
 広州大学で清掃作業をする女性たちが、性差別の問題でストライキを決行。訴訟も起こした。

【10位】同性愛を理由に解雇は不当
 同性愛者同士のトラブルの場面がネットに流出。それを理由に解雇された人物が裁判に訴えて話題に。中国では同性愛を理由に会社を解雇された問題が裁判沙汰になるのはこれが初めてであった。

 こうして見てみると実にさまざまな性に関する事件が起きていたことが分かる。それにしても同性愛者がこれ中国社会で存在感を増しているとは驚きである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

モテ男だった火野正平さん(時事通信フォト)
【火野正平さん逝去】4年前「不倫の作法」を尋ねた記者に「それ俺に聞くの!?」 その場にいた娘たちは爆笑した
週刊ポスト
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
「SUNTORYドリンクスマイルBAR」
《忘年会シーズンにこそ適正飲酒を》サントリーの新たな取り組み 自分に合った “飲み“の楽しさの発見につながる「ドリンク スマイル」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン