【書評】『シャルキュトリー教本 フランスの食文化が生んだ肉加工品の調理技法』/荻野伸也/誠文堂新光社/3456円
【評者】鳥海美奈子(ジャーナリスト)
シャルキュトリーとは、肉の加工品を意味するフランス語。パテやテリーヌ、ソーセージなどがその代表格だ。そういった料理は狩猟や牧畜が主流のヨーロッパにおいて、肉を長期保存するための知恵でもあった。
東京・世田谷区にある予約の取れないフレンチ『OGINO』のシェフ・荻野伸也氏が、試行錯誤の末たどり着いたレシピを本書で披露する。
シャルキュトリーに主に使われるのは豚肉。その際、最も大切なのは塩である。
塩は保存と脱水、調味の役割を持つ。肉にきちんと塩を吸わせると、浸透圧により水分が抜ける。塩は下味をつけると同時に、菌の繁殖も防いでくれるのだ。
市販のものは発色剤などの添加物が多々使用されているが、手作りなら砂糖を入れれば肉の色を美味しそうに見せられるという。
そういった基礎知識をしっかりと学んだうえで各レシピへ。ここには『OGINO』の看板メニュー、パテ・ド・カンパーニュの作り方も掲載されている。フランスでは豚肉と豚レバーを使うが、日本人の嗜好に合わせるなら鶏レバーがいい。肉をミンチ状にして調味料、ワインや卵を加えたら、それを耐熱皿に入れてオーブンで焼く。その他にもソーセージやサラミ、ハムや鶏レバームースの作り方も掲載されている。
本書はプロの料理人向けだが、そのレシピは決して複雑ではなく、一般の料理好きでも挑戦できる内容に満ちる。ホームパーティーなどで用意すれば、その場を一段と盛り上げてくれること必至である。
※女性セブン2015年1月8・15日号