香港の選挙制度をめぐるデモ活動は、2014年中に強制排除が行われ終息したが、中国大陸に飛び火したようだ。ウィリー・ラム氏が解説する。
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香港の選挙制度をめぐる学生主導の座りこみデモは終焉を迎えたが、中国大陸に徐々に浸透しているようだ。香港のある民主派学生は「中国の留学生が香港島・金鐘地区で座りこみデモに参加していた」と証言しているほか、大陸の留学生がデモ支持のフェイスブックを作成。いまはもう閉鎖されているが、2014年の9月30日に開設されたことは確認されている。
ある香港に留学した大陸出身の大学生はネットにデモを支持する書き込みをしたところ、彼のもとに警察からの警告メールが届き、中国に住む家族が当局の聴取を受けたという。中国政府は香港の民主化デモが大陸に波及することを警戒して、中国内の民主化活動家や人権活動家らの身柄を軒並み拘束しており、その数は100人とも200人とも伝えられる。
ネットなどの通信手段が発達しているいま、中国政府は今後も学生側がゲリラ的に簡単に参加者を集めることを強く警戒している。今回の香港の運動が証明しているように、当局側にとって取り締まるのは極めて難しく、いったん起きれば運動の長期化を覚悟しなければならない。仮に、死者でも出れば、国際世論の批判にさらされるなど、その代償は極めて大きい。
そこで、習近平指導部が講じた対策は香港人の内部分裂工作だった。まずは親中国系メディアを総動員して、座りこみデモが違法であることを強調したほか、親中国系団体に働きかけて、「学生らの公道の占拠で経済の損害は大きく、市民生活にも大きな影響が出ている」と訴えさせた。
香港では多数の中国系企業が進出しており、その経済的影響力は無視できない。例えば、1948年に香港で創設され、貿易や食品、電力、ガスなどのエネルギー、セメント、不動産など中国国有の一大コングロマリット・華潤集団がその典型だ。同集団には20万人もの香港人が働いている。
香港株式市場に上場している企業数は約1500社だが、そのうち中国に関係する企業は4割を占めるといわれる。それらの企業の香港人従業員は有形無形の圧力を受けているのは間違いない。
翻訳・構成■相馬勝
※SAPIO2015年2月号