「中央政府はあなたと香港特別行政区政府を一貫して支持し続ける」
これは、中国の習近平・国家主席の言葉だ。習氏は2014年12月19日、マカオの中国返還15周年祝賀行事に参加するため現地入りし、同席した梁振英・香港行政長官や香港政府の主要幹部と会見した。
習氏は現われた梁氏に「よく来たね」と満面に笑みをたたえ、近寄って親しげに握手。梁氏も笑顔で習氏の手を何度も握った。「この日の主役は崔世民・マカオ行政長官ではなく梁氏のようだった」と同席した香港政府幹部は語る。
習氏と梁氏は11月初旬にも北京で会っており、1か月強で2回も会見するのは異例といえる。習氏が梁氏を特別扱いするのは、もちろん、9月下旬から香港の繁華街を占拠していた学生や民主派グループの強制排除を断行したからだ。
「習氏が強硬姿勢を貫くのは、民主化運動が中国本土に拡散することを恐れているからだ。習氏は香港の民主化運動を根絶やしにしようと考えている」
そう語るのは、世界的に活躍するチャイナウォッチャー、林和立・香港中文大学教授だ。林教授は、香港の民主派は、見せしめのために厳しく罰せられるとみている。 今回の強制排除で逮捕された1000人近い民主派は今後、政治的権利を制限される可能性が高い。
香港警察トップの曾偉雄・香港警務処長(警察庁長官に相当)は「逮捕者の取り調べを最優先に進め、3か月以内に処分を決める」と豪語し、政治活動の禁止などの処罰も示唆した。
民主派寄りの立法会議員(国会議員に相当)は、二六時中、不審な車で尾行されたと警察に被害を訴え、中国(本土)籍の男2人が逮捕されたが、なぜかすぐに釈放された。
いまや香港政府は完全に北京の支配下に置かれた。
●文/相馬勝(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2015年1月16・23日号