課税強化を目的としては、実に半世紀ぶりに見直された相続税。今回の改正について、相続専門の税理士法人チェスター代表、税理士の福留正明さんが説明する。
「最も注目すべき改正点は 『基礎控除額の引き下げ』です。これにより、相続税の課税対象となる人がぐっと増えます」(福留さん)
基礎控除とは相続財産のうち、非課税で受け取れる部分のこと。その枠を超えた部分に税金がかかる。その基礎控除がなんと4割も減らされてしまったのだ。改正前の基礎控除は
【5000万円+1000万円×法定相続人の数】
だった。法定相続人とは、法律で定められた相続権を持つ人のことで、たとえば夫が死んだ場合、妻や子供にあたる。それが、改正によって
【3000万円+600万円×法定相続人の数】
となった。実際にどの程度、負担は大きくなるのか。シミュレーションしてみよう。
「たとえば、夫の遺産を妻と子供2人で相続する場合、改正前の基礎控除額は、【5000万円+1000万円×3人=8000万円】でしたが、それが改正後は【3000万円+600万円×3人=4800万円】になりました。4800万円を超えた分は課税対象になります」(福留さん)
もしも、法定相続人が1人しかいなかった場合は、基礎控除額は3600万円まで減ってしまう。
「それにしたって、わが家はそんな金持ちじゃないから関係ない」と思ったら大間違いだ。遺産には預貯金だけでなく自宅の不動産なども含まれる。東京、名古屋、大阪など大都市圏に一戸建てのマイホームを所有していれば、土地・建物を合わせた評価額は中古物件でも4000万~5000万円に達するケースは少なくない。それに金融資産を合わせると、あっという間に基礎控除額を上回ってしまうのだ。
年間1000件以上の相続相談を受ける夢相続代表、曽根恵子さんは言う。
「これまで全国で4%程度だった相続税の課税対象者は、今後6%ほどに増える見込みです。地価が高い都市部に一戸建てを持っている場合は、その“課税ライン”を超えやすい。都市部に限れば、課税対象者は10%を超えるといわれています」(曽根さん)
今回の改正が「課税強化」を目的としているといわれているのはその点を指している。
たとえば、遺産が7000万円ある場合、従来は無税だったが、これからは2200万円が課税対象となる。
相続税は、被相続人(死亡した人)の死後10か月以内に払うのが決まり。「今はまだ関係ないから」と何も対策を取らずにいると、いざというときにとてつもない負担を強いられるハメになる。
※女性セブン2015年1月22日号