昨年5月、ある女性アーティストが世界的に有名なフランスのオルセー美術館で女性器を露出するパフォーマンスを行い、世界のメディアが大々的に報道した。
世界を驚かせたアーティストの名は、デボラ・ドゥ・ロベルティス。フランスとドイツに挟まれたベネルクス地方の小国・ルクセンブルク出身の30歳だ。事件以降、長く沈黙を守っていた彼女が、あの日の「覚悟」と「信念」を初めて語った。
デボラのアート活動のスタートは10年前、20歳の頃にさかのぼる。
「大学時代からアーティストとして活動してきました。テーマも当時から変わっていません。性器露出パフォーマンスの研究のため、ベルギーのブリュッセルでストリッパーを経験したこともあります」
その後はモデルをしたり、映像作品に出演したりした。
「すべては今回のパフォーマンスに通じるものです。つまり、人々がどういう思いで女性の肉体や性器を見つめるのかを徹底的に突き詰めたかった」
23歳のときには、ベルギーで50歳になるポルノ映像制作者の男性とコラボレートしたこともある。
「全裸の私が電車に乗り込み、服を着ている男性にペニスを出してもらうという企画です。私はそれをアート作品として撮影し、男性はポルノとしてカメラを回していました。6年前にはホテルの一室で男性に私の裸体を2時間かけて撮影してもらい、作品にしました」
デボラが本格的に女性器を“公開”するパフォーマンスを発表するようになったのは1年半ほど前からだ。
「オルセー美術館でやったようなポーズをいろんな場所で披露し、仲間の写真家に撮影してもらいました」
ただ、アートパフォーマンスだけで生計を立てるのは難しいという。
「企業のメセナ活動の援助金をいただいたり、親からもずいぶん助けてもらっています。コツコツとやってなんとか暮らしています。正直なところ私の作品を評価してくれるスポンサーが欲しい」
男性との交際からは遠ざかっているという。
「恋人はもう何年もいません。せっかくお付き合いを始めても、私の芸術活動のことを知るとたちまち身を引いてしまうんです。これは仕方ないことです」
※週刊ポスト2015年1月16・23日号