常軌を逸した事件、というしかない。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国富裕層の金満ぶりも、ついにここまで来たか! そんなため息が漏れそうなニュースが注目を浴びたのは、1月9日のことだ。場所は中国安徽省の省都・合肥市内にある大きな交差点だった。
そこに建つ交番に勤務する交通警察官のもとに1人の若い男性がBMWを乗り付けてやってきた。男は数時間前、市内の路上に違法駐車していたため違反切符を切られ罰金が課せられたことに腹を立てたという。
報道によると、男が車から離れている間に警官が違反切符を貼り付けて去り、それを見た男がわざわざ文句を言うために交番を訪れたというのだ。
当日、周囲に居合わせた目撃者によると、男は「警察は金が欲しいだけだろう」といった暴言を繰り返し、「そこまで熱心に取り締まらなくても良いじゃないか」といった趣旨の発言もあったという。
だが警官も、「違反は違反」として男の抗議を一切受け付けなかった。すると男は、一旦車に引き返すとビニール袋をもって現れ、それを交番に向けて投げつけ、そのまま車を発進させてどこかに行ってしまった。
投げつけられたビニール袋は計2つ。警官が中身を確かめたところ、ビニール袋のなかには札束が詰まっていた。そしてお札を数えて見ると、何と100万元(約1800万円)を超える金額だったのである。
100万元といえば、BMWがもう一台買えてしまう金額で、激した感情のまま投げつけるにしてはあまりに大きな金額だ。
結局、投げつけた人物はすぐに警察によって特定され、金も本人の下に戻ったというのだが、この男、街では有名な違法駐車の常習犯だったというオチもついた。
それにしてもこの男、切符を切られたことが腹立たしかったのか。それとも罰金が嫌だったのか。いずれにせよ100万元の価値があるとは思われない。