故・やしきたかじんさんのケースに見られるように、芸能人の間での相続トラブルは時々報じられるが、一般人でも、たとえ財産が少なかろうが相続トラブルが発生するケースは多々ある。
例えば、東京都在住の主婦・A美さん(50才)は昨年、父親を病気で亡くした。A美さんには父と同居していた3才上の兄がいる。葬儀後、兄から送られてきた父の遺言書のコピーには、自宅は母に、預貯金などは兄に譲るとだけあり、A美さんの名前はどこにもなかった。「優しかった父がそんなことをするはずがない! 兄が勝手に作ったに違いない」とショックと怒りで、立ち直れずにいる。
「法定相続人に不公平な遺言はないほうがいいですが、実際、そうしたケースが多い。その場合、法律で最低限の財産を請求できる『遺留分』が認められています。ただ、遺留分を取り返しても遺言書に自分の名前がなかったときのつらい気持ちは消えません。遺言書を書いてもらうとき、なるべく法定相続人全員の名前を記載するようお願いしましょう」(A美さん)
相続できる遺留分は配偶者がいる場合、子供の遺留分は1/4。子が2人のA美さんの場合、財産の1/8を請求する権利がある。
愛知県在住のB子さん(58才)は、3姉妹の長女。父はすでに他界し、同居していた母親をほぼ1人で介護していた。妹たちは年に実家に数回来る程度。B子さんは、仕事を辞めて母の面倒を見ていた。母の死後、残った一戸建てとわずかな預貯金を3姉妹で分ける話し合いで、妹たちから「家を売って財産を3等分してほしい」と言われた。「私の苦労はどうなるの? そんな不公平な話はないよ!」と真っ向対立。だが、その不公平こそ法律なのだという。
「法律では子が親の面倒を見るのは当然という考え方。介護した子が、財産を多くもらえるという規定はないのです。ただし、相続人が私財を出して亡くなった人の生活費や医療費を負担していた場合は、『寄与分』として相続財産を増やすことができます」(B子さん)
寄与分をもらうには、自分がいくら親にお金を出したか説明できる資料が必要。介護に支出した費用は面倒でもレシートとともに書き留めておくことが鉄則という。
※女性セブン2015年1月22日号