戦後70年の節目を迎える2015年、日本の安全保障をめぐる状況はさらに危機を高めそうだ。その中で日本が取り組むべき課題とは何か、京都大学名誉教授の中西輝政氏が提言する。
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戦後70年という大きな節目の年、わが国は安全保障上の深刻な危機を迎えている。
野心的な海洋進出を進める習近平の中国は、2017年の党大会までに第二列島線(*注)の突破を目指すだろう。近い将来、伊豆七島に中国の空母が遊弋(ゆうよく)する時代が来る恐れもある。
【*注/中国の海洋軍事戦略における防衛ライン。伊豆・小笠原諸島を起点に、グアム・サイパン、マリアナ諸島群を結ぶ線】
先行きの見えない北朝鮮は依然として脅威であり続け、反日で突っ走る韓国はパートナーとは呼べない。帝国主義に戻ったような増長ぶりを見せるロシアも不気味だ。
戦後70年間、アジアの重しであった米国はオバマ政権で急速に腰砕けになり、長く続いた「パクス・アメリカーナ」(アメリカの覇権)は縮減した。今後、横須賀の第七艦隊の多くはハワイやグアム基地の所属となり、在日米軍は中国を抑止できないだろう。
正念場を迎えた日本だが、集団的自衛権の行使などの対症療法では、差し迫る危機を本当の意味で打開できない。日本が目指すべきは、憲法改正による安全保障体制の強化以外にない。まさに「この道しかない」のだ。
なかでも日本を無防備な依存国家たらしめた9条の改正と、空虚な理念を提示した前文の修正が大本命である。戦勝国により押しつけられ、主権や軍事力といった国家の基本的バックボーンを放棄した9条と前文がある限り、日本の平和と繁栄を安心して次の世代に受け渡せない。
憲法改正に踏み切れば中国、韓国との関係が修復不能になると危惧する人が多いが、それは大間違いだ。中韓が歴史認識や靖国参拝を執拗に申し立てるのは、日本の憲法改正を是が非でも避けたいからであり、彼らにとって慰安婦、南京大虐殺、東京裁判といった過去の話など本当はどうでもよい。
「侵略を反省しないひどい国」と声高に非難し続けることで“お人好し”の日本を萎縮させ、自存自立のできない国家に抑え込み、憲法改正を阻止することが中韓の最大かつ唯一の狙いなのだ。
国際社会の冷徹なロジックに従えば、憲法改正で歴史問題は雲散霧消する。国際的な常識では、十全なる武力を背景にした国を相手に、いかなる国も一方的な圧力外交は行なえない。ましてや70年も前の捏造を交じえた歴史を口実に内政干渉しようとしても一蹴されて終わりだ。従って日本が憲法を改正して真に自立した国家になれば、中韓は口を噤(つぐ)まざるを得なくなる。
※SAPIO2015年2月号