中国人民解放軍南京軍区の副司令官を務めた王洪光氏は12月1日、共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)に「北朝鮮は既に中国の根本利益を損ねている。中国が(北朝鮮のために)戦う必要はない」との論評を載せ、大きな話題になっている。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」などが環球時報の記事を引用し、「中国はもはや北朝鮮を見捨てた」などと指摘。対する北朝鮮もロシア寄りの姿勢を強めており、中朝関係の冷却化が急速に進んでいる。
王氏は同紙への寄稿で、「中朝両国はかつての社会主義政党間の同志的関係ではなく、単なる国家間の利益関係が主体になっている。それは、北朝鮮がそうしたからだ」と指摘。その理由として、中国が断固として反対している北朝鮮の核兵器開発を北朝鮮指導部が推進しているためで、「中国に核汚染(のリスク)という深刻な脅威を与えている」と激しく非難。
そのうえで、北朝鮮が米国や韓国などから攻撃を受けても、「中国は救世主ではなく、北朝鮮が崩壊するとしても救うことはできない」と突き放した。
中朝関係は2013年12月、北朝鮮の張成沢・国防委員会副委員長の処刑以来、急激に悪化し、中国はすでに北朝鮮への石油輸出をストップしているほか、経済支援もほとんど行なっていない。
その代わり、急接近しているのがロシアだ。金正恩第一書記は自身の特使として、事実上のナンバー2で最側近の崔竜海書記を11月中旬、ロシアに派遣し、金氏のロシア訪問について協議したとみられる。
これに先立ち、プーチン氏の側近として知られるガルシア極東発展相が11月下旬、ロシアの経済代表団を率いて訪朝し、総事業費が約250億ドル(約2兆9000億円)に及ぶ北朝鮮の鉄道整備・改修計画を請け負うことで合意。
外貨不足の北朝鮮は、この見返りとして、国内の金やレアメタル(希少金属)など豊富な鉱産資源の開発権益をロシア側に提供する。さらに、金氏の信任が厚い側近の李スヨン外相が10月末から11日間にわたって訪露し、ラブロフ・ロシア外相らと会談している。
サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、中国指導部と緊密な関係を維持してきた張成沢氏が粛清されたことで、中朝関係は緊張状態が続いており、金第一書記が北朝鮮の最高指導者就任後、初の外遊先としてロシアを選ぶことで、対露関係を最重要視している姿勢を示す狙いがある。
しかし、そうなれば、中朝関係はほぼ断絶状態に陥ることが予想され、北京の軍事的圧力が増し、金第一書記の首を絞めかねないのは明らかだ。