2015年も前途多難が予想される日韓関係。2014年に注目を集めた産経新聞名誉毀損起訴事件の今後の行方について、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が解説する。
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日韓関係に番外的に飛び込んできた産経新聞名誉毀損起訴事件は年を越すことになったが、新年の早い段階で法廷での結論が出るものとみられる。一審判決の予想については韓国の法曹界や言論界の支配的見方は「無罪」論である。
大統領(権力者)にかかわるスキャンダル的噂を紹介した外国のメディア報道を法的に処罰することには、国際的にはもちろん国内的にも否定論が圧倒的だからだ。
朴槿恵大統領および青瓦台(大統領官邸当局)にとっては処罰の行方より問題の核心である“疑惑”の否定が関心事だ。そこで判決はまず「公判を通じ産経新聞が報道した噂は虚偽だったことが確認された」と噂を否定したうえで「ただ、だからといってそれを報道した記者を名誉毀損として処罰するには値しない」として無罪を宣告すればいい。
こうすることによって青瓦台は「法廷で噂はシロと判明」となって安心し、同時に無罪によって韓国は司法の独立性が守られ言論の自由を尊重する国だとなって国の体面も守られるというわけだ。
ついでにいえば産経新聞も報道内容は否定されたが無罪を勝ち取ったことで“勝利”を語れる。
これは3者すべてを満足させられる判決である。「常識的にいってこれしかない」というのが大方の展望だが、韓国の司法―裁判官がこの常識で判決を下すかどうか。
※SAPIO2015年2月号