大改正された相続税がついに2015年1月1日から適用開始となった。基礎控除は4割カットで、課税対象者が1.5倍に増えるという。もはや「金持ち」にだけ関係がある税制度ではなく、わが家の問題として考えなければいけないのだ。
相続税を減らすには、相続財産を減らすのが基本だ。生前贈与は、現金の財産が多い家庭に最も手っ取り早い対策だ。
年間110万円までなら非課税で贈与できる。毎年、生前贈与で少しずつ財産を子や孫に移しておけば、相続財産が減り、いざというときに節税となる。相続専門の税理士法人チェスター代表、税理士の福留正明さんが解説する。
「法定相続人への贈与は、被相続人が亡くなる3年前まで遡って計算されます。たとえば、2年前に110万円を贈与された場合、相続財産としてみなされてしまう。法定相続人ではない孫に贈与してもらうと安心です。そして、1年経つと、また110万円を非課税で贈与できるので、早く始めるほど効果が大きくなります」(福留さん・以下「」内同)
贈与はお互いに、「あげた」「もらった」と証明しなければいけない。贈与契約書を作成しておくといいだろう。
「契約書はパソコンで作れます。簡単な形式のものでいいですが、110万円を誰にいつどのようにあげたのかを明記しましょう。また最低でも、お金が振り込まれた通帳などは、贈与を受けた側が管理するのが鉄則です。もし贈与する側が、自分の子の名義の通帳を持っていた場合には、税務署に相続税の計算対象となる『名義預金』の指摘を受ける可能性があります」(福留さん)
一気に相続財産を減らしたい場合に使えるのが、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」だ。30才未満の孫や子供への教育資金を目的とした、この贈与は、1人につき最大1500万円まで非課税で贈与できる。
「この制度は今のところ2015年末までの時限限定措置ですが、おそらく延長されるとみられています」(福留さん)
教育資金の適用範囲は幅広い。学校の入学金や授業料はもちろん、塾や水泳、ピアノなどの習い事までとさまざま。
ただ、その資金は信託銀行などに専用口座を開設して、一旦立て替え払いで支払っておき、引き出す場合は教育機関の領収証を持っていく必要があるなど、使い勝手がやや悪い。しかも、30才までに使い切れなかった場合には、残額すべてが贈与税の課税対象になってしまう。
「この制度を使わなくても子や孫の教育資金をその都度、直接教育機関などに払う形であれば非課税です。たとえば、私立大学の入学金と初年度の学費の合計は200万円、医学部なら1000万円ほどかかりますが、孫の入学に際して、祖父がそれを支払う分には問題ありません。金額が大きくても、おじいちゃんが孫にランドセルを買ってあげるのと同じ意味です。ポイントは、『その都度』『直接』教育機関などに払ってもらうことです」(福留さん)
※女性セブン2015年1月22日号