「ニュースになっていたので、驚きました。近くのTSUTAYAでは、すでに『文学界』は売り切れていて買えなくて…。ネットで注文したんですけど、まだ届かないんですよ。早く読みたいです」
嬉しそうに話すのはお笑いコンビ、ピース・又吉直樹(34才)の母親だ。彼の小説『火花』を掲載した『文学界』(文藝春秋)が異例の重版を記録し、過去最高の4万部に達したことが話題になっている。
又吉といえば、4本のレギュラー番組のほか、雑誌の連載を5本も抱える売れっ子芸人。読書家としても有名で、移動時は4冊の文庫本を常に鞄に入れ、蔵書は2000冊以上にのぼる。そんな“お笑い文士”の半生を、母親が語ってくれた。
又吉は大阪府寝屋川市生まれで、きょうだいは姉が2人いる。両親は共働きで、決して裕福とはいえなかった。
「たまに家族で焼き肉店に行っても、会計に気を使って、あまり食べないようにしたり、昔から、優しい子でした」(母親)
小学校からサッカーを始めたが、性格は当時から内向きだったという。
「グラウンドで保護者たちが水を配るんですが、直樹は取りに来ないで他の友達に持ってきてもらっていました。とにかくシャイなんです」(母親)
読書に傾倒し始めたのは、中学2年の時。過去のインタビューによれば、国語の教科書で読んだ芥川龍之介の『トロッコ』に感銘を受けたのがきっかけで、その後、太宰治や尾崎紅葉、島崎藤村、谷崎潤一郎など近代文学に手を広げていったという。
高校はサッカーの名門校に進学し、インターハイにも出場した。だが、他のメンバーがサッカー推薦で大学に進むなか、「お笑いの世界で生きていく」と決めていた又吉は、東京のNSC(吉本総合芸能学院)に入学する。そして、三鷹市にある太宰の旧邸宅跡地に建つアパートに住み、芸人を目指した。
23才の頃、売れないまま当時の相方が引退し、コンビ解散。又吉は寺に出家しようとしたが、NSC時代の同期で友人だった男に止められる。
「それが現在の相方の綾部祐二さん(37才)だったんです。当時、彼はピン芸人として活動していたんですが、まったく売れてなくて…。コンビで再スタートしたいと思っていたところに、ちょうど又吉さんが1人になっていたので、声をかけて『ピース』を結成したんです。実は以前からキャラ立ちしていた又吉さんを狙ってたんですよ。組めば売れるって」(又吉の知人)
その後もしばらく不遇が続いたが、2010年『ピカルの定理』(フジテレビ系)出演をきっかけにブレークを果たす。それでも、母親との関係は、売れた今も相変わらずだ。
「月に1回、安否確認のメールをしています。でも今回のことも、たった1行“本が出ます”とだけしか言わないの。雑誌のコラムも読んでいますが、ある意味、それも安否確認のためだったりします(笑い)」(母親)
※女性セブン2015年1月29日号