ロシアによるウクライナ侵攻、マレーシア航空機の墜落事故、シリアの内戦、イスラム国問題などで、アメリカはなんら有効な手を打つことができなかったとの批判が高まっている。世界での影響力が低下しているオバマ政権の現状について落合信彦氏が解説する。
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2014年は、アメリカが自ら「もう世界の警察ではない」と宣言したことに象徴される年だった。
ロシアによるウクライナ侵攻、マレーシア航空機の墜落事故、シリアの内戦、ISIS(イスラム国)の台頭……どれをとっても、アメリカはなんら有効な手を打つことができなかった。
それは第一にはオバマの臆病によるものだが、それに引きずられてアメリカ国内全体に厭戦気分が漂っている。アメリカはかつてのような「孤立主義」に戻っているのだろう。
1914年に始まった第一次世界大戦では、アメリカは終戦間近の1917年に参戦し、「ヨーロッパの領土が目当てなのか」と批判を浴びたことで、国民全体が戦争嫌悪に陥った。だからこそ、第二次大戦の際に大統領だったルーズヴェルトは、日本に真珠湾攻撃を仕向け、1発目は相手に撃たせることで国内世論を導き、最終的にはドイツとの戦争に持ち込むという手段を選んだのだ。
いまの孤立主義はそのときとよく似ている。中東に介入しても感謝されないことに、アメリカ人の多くが、うんざりしているのだ。
アメリカがいまなお世界最強の軍隊を有していることに変わりはない。仮に中国がアメリカと軍事衝突しようにも、現状ではお話にならないだろう。中国が持つ核ミサイルで、アメリカ本土に届くものはいまだにない。撃ったらすぐにアメリカのMD(ミサイル防衛)で撃ち落とされてしまうからだ。
一方で中国の周りは、アメリカの潜水艦が取り囲んでいる。その潜水艦にはトライデント(潜水艦搭載)核ミサイルが搭載されているのだ。つまり、中国の核はアメリカに届かないが、アメリカの核はいつでも中国を狙える。この差は決定的だ。
※SAPIO2015年2月号