昨年末、TBSは釈明に追われた。同局の記者が沖縄出張取材の際、自民党の参議院議員にリゾートホテル宿泊代を負担してもらっていたことが明るみに出たからだ。TBS側は慌てて返金し、「記者教育を徹底する」と表明した。が、TBSが隠している不祥事はこれだけではない。
〈海上保安庁は(11月)23日、小笠原諸島沖で中国漁船の船長、謝華文容疑者を、夜間にサンゴを密漁した疑いで逮捕し送検しました〉
昨年11月26日の夕方のニュース番組『Nスタ』で、中国漁船によるサンゴ密漁事件をそう報じた。テロップには「中国漁船・船長 謝華文容疑者(52)」とある。ところが、画面に映し出された容疑者の映像は全くの別人だったのである。
使用されたのは、やはりサンゴ密漁の容疑で5日前の11月21日に逮捕されていた林本章容疑者の映像だった。その際にもTBSは林容疑者の逮捕を報じている。つまり、TBSは林容疑者の映像を2度使ってしまったわけだ。
あってはならないが、映像の取り違えや名前のミスは起きてしまうことがある。そんな時には当然、迅速に訂正すべきだ。放送法第9条にも、
〈(放送内容が)真実でないことが判明したときは、判明した日から2日以内に(中略)訂正又は取消しの放送をしなければならない〉
と定められている。では、いつ、どのように訂正されたのか。TBSに質すと、
「放送後誤りに気づき、同日夜の『NEWS23』で正しい映像を使用したニュースを放送しました」(広報部)
と答えた。要するに、「別の番組で正しい映像を使って報道し直したのだから、それで十分だろう」ということらしい。しかし、『NEWS23』内はおろか、誤報した『Nスタ』内でも「訂正」された事実はない。不祥事を隠したかったといわれても仕方ない。
再びTBSに放送法違反の可能性を指摘したうえでなぜ訂正しないのかを問うたが、
「前回お答えした通りです」
と逃げの一手。放送法以外に民放連が定める「放送基準」でも、
〈ニュースの誤報は速やかに取り消しまたは訂正する〉
と規定されている。その民放連の会長はTBSホールディングス会長の井上弘氏。これでは朝日の誤報も政治家の嘘も批判できる筋合いなどない。
※週刊ポスト2015年1月30日号