年明け早々のゴルフ界に激震が走った。松山英樹が渡米を前に今季の国内ツアーのメンバー登録を辞退したのだ。
JGTO(日本ゴルフツアー機構)の規定では国内のシード選手には年間5試合の出場が義務づけられる。この規定は、昨年3月に突然設定されたもので、違反者には約100万円といわれる制裁金に加えて翌1年間のシード権停止という処分が下されることになった。
松山はプロ転向2年目の昨季から活動の場を米国に移した。そのため昨季も国内の試合には2試合しか出られず、規定に抵触して制裁金を支払っている。そして今季も「5試合に出られる確証がない」として、選手登録を見送った。
松山の後見人で東北福祉大学ゴルフ部監督の阿部靖彦氏はこう語る。
「まず申し上げておきたいのは、松山も私も、JGTOの規定に対する不満もないし反対もしていません。松山が日本ツアーを見限ったかのように報じられていることは残念であり、それは本人の本意ではないことをご理解いただきたい。
松山は“日本の試合には出たいが、今はメジャーで勝ちたい”といっていました。メジャーで勝つことを最優先する限り、JGTOの規定である最低年間5試合に出場する確約はできない。出られるものなら出たいと思っても、今の時点では出場の日程を組めない。だから、メンバー登録をしなかったということです」
世界レベルの選手を国内に縛りつけることは、選手にとってもファンにとっても不幸だと語るのは、日本人として初めて米PGAツアーのライセンスを取得して世界で戦ったプロゴルファーの杉本英世氏である。
「日本ツアーを守らなければならないという気持ちもわかるが、メジャー優勝を目指している松山君に、言い方は悪いがアメリカより“下”の日本ツアーを見ろというのは酷な話です。ファンの失望はもちろん、後に続く選手にも影響が出てしまいます」
ゴルフ評論家の菅野徳雄氏も頷く。
「日本のゴルフは危機的な状況。最大の理由は、選手が世界で戦える環境をJGTOが整えてこなかったことにあります。(国際大会の)東京五輪の開催が決まっているのに、環境整備も進んでいない。このままでは100年たってもメジャーには勝てない。米ツアーに参戦する選手を罰するのではなく、逆に海外の賞金を国内賞金額に加算するくらいの英断が求められている」
内向き志向を強めるばかりの日本ゴルフ界は世界を見据える松山には狭すぎる。
※週刊ポスト2015年1月30日号