中国の習近平・国家主席(党総書記)の『重要講話読本』が昨年6月下旬に刊行されて以来、年末までの半年間で1500万部以上発行されたことが分かった。中国共産党機関紙「人民日報」によると、最高指導者の同種の本としては1978年以来の改革・開放路線導入以来最多となった。
これは半年間での発行部数としては世界一だが、北京のある知識人は「中国全土の党機関が学習用として、組織的に購入しているだけで、だれ1人真剣に読んでいる人はいないだろう。売れているが、読まれていない本としても世界一だ」と皮肉っている。
この本は習氏が2012年11月、党総書記に就任して以来の重要講話をまとめたもので、昨年6月23日に発行して以来、わずか1週間で200万部を突破。1か月間では500万部となり、ほぼ2カ月間では1000万部の大台を突破。昨年末までには1511万4000冊と堂々の大ベストセラーとなっている。
同書は「偉大なる中華民族」「中国の夢の実現」という民族色の強い一党独裁体制のイデオロギーを徹底するための教材で、全国の党・政府幹部や庶民を対象にした学習会を展開。
さらに、このなかには少数民族の言語で書かれた本も9万5000部含まれており、チベット自治区や新疆ウイグル自治区などの少数民族向けに思想統制を強める狙いもある。
人民日報など中国メディアによると、学習会の参加者たちは習氏の重要講話について「中国の真の問題を的確に把握し、庶民の心情を語っている」などと絶賛しているという。
だが、ネット上では「党員ならば、学習会参加は義務づけられているので、重要講話読本を買わなければならない。全国の党員数は8700万人を超えているので、8700万部以上売れてもおかしくないが、1500万部というのは買っていない党員がいる証拠だ」との書き込みもある。