中国で発覚する汚職は、相変わらず唖然とするしかないものが多い。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が指摘する。
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習近平政権下の中国では、官僚の受難が続いている。かつては権力の庇護の元でやりたい放題。賄賂と接待漬けであった官僚たちが、いまや人民の顔色をうかがいビクビク怯える時代を迎えている。
2015年が明けて間もなく、そうした官僚の現実を投影したニュースが深圳新聞ネットに掲載された。
タイトルは、〈失脚した深圳の役人が東莞市で計40回も売春接待 費用は全額贈賄側が支払う〉だ。
タイトルにある失脚した役人とは元深圳市政法委員会副巡視員の王合意(55)という人物である。政法委員会とは党の司法関係を監督する組織で、一般に警察に対し強い影響力を持つとされる。
王が問われた規律違反は80万元(約1440万円)の収賄と性の接待を受けたこと。民間会社を経営する告発者の情報提供を入り口に規律検査が行われたという。
告発者の陳は2007年、自ら経営する会社がトラブルに見舞われ、困った末に王の存在を知り仲介者を通じて王と会い解決を依頼したという。その際、現金で80万元を渡したが、その後も何度も呼び出されて東莞市での接待を求められたという。
記事によれば王は、陳の再三の求めを利用しながら4年間で約40回も性接待をさせながら、少しもトラブルを解決しようとしなかったというのだ。
業を煮やした陳は2011年5月末、録画機材をこっそり仕込み性接待を行い、そのデータをもって〝挙報〟(密告)に向かったのだった。
かつてであれば、こんなことをすればもみ消された挙句に報復されるため泣き寝入りするしかなかった贈賄側も、いまや習近平のおかげで立場が強くなっている。返り血は浴びることになっても、相手を葬り去ることができるのだ。
それにしても東莞市で接待の強要とは、何ともバブリーな話である。いまの官僚たちには懐かしい昔の話でしかない。厳しい手入れのため壊滅状態になっている東莞市とともに二度と見られない夢である。