ドイツの建築家、ブルーノ・タウトが京都の桂離宮を訪れた際の第一声が「泣きたくなるほど美しい」だったことは有名だが、かように“和の神髄”について、外国人の目を通して教えられることは少なくない。
輪島漆芸作家でイギリス人女性のスザーン・ロス氏は、日本の漆に魅せられた一人。伝統文化を絶やさぬよう、啓蒙活動にも積極的に取り組んでいる。
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漆器は、手入れが大変、面倒くさい。そう思う人が多いのを非常に残念に思います。確かに、長期保管には気を使う必要がある。でもそれは、お正月にしか使わないから。生活の中に漆がないからなんです。
当然、売れなければ漆の職人はどんどん減っていきます。研修所もあるし、漆芸を学ぶ学生もいるのですが、そのほとんどが女性。つまり、跡継ぎにならないんです。あと10年、20年で本当に途絶えてしまう。
昨年、ハワイのイーストウェストセンターで漆の展示会が行われました。私もお手伝いして、いろんな先生方の作品や自分の作品を展示した。反響ありましたよ。
そのあとホノルル美術館でワークショップを開いた。ニューヨークでは「日本の漆がなくなってしまう」という内容の講演もしました。今は日本の伝統文化を絶やさないために啓蒙、PRするのが私の仕事の一部になっています。
日本の作家や関係者が何もしていないとは思わないけど、まだまだ危機感は希薄。外国人に向けたプレゼンテーションも上手じゃない。
漆自体の魅力は多くの人がわかってくれるのだから、外国の生活様式に合ったものを提案すれば、絶対アピールできるはずです。外国人だって、若い人だって、使ってもらったら絶対良さがわかる。私、自信があるんですよ。
●取材・構成/大木信景(HEW)
※SAPIO2015年2月号