業績不振にスキャンダルと、最近のマクドナルドにはネガティブなニュースばかりがついまとう。不振は日本だけでなく世界的な傾向だが、フランスのマクドナルドだけは地域性を生かして過去最高の売り上げを記録している。これらの現象からわかる今の時代の成功のカギについて、大前研一氏が解説する。
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今期、上場以来初の営業赤字に転落する見通しを発表した日本マクドナルドは、業績悪化に歯止めがかからなくなっている。昨年11月の既存店売上高は前年同月に比べ12.3%減少し、前年実績を10か月連続で下回った。来期(2015年12月期)の予想も「前期比マイナス」だ。
さらに、異物混入事件が相次ぎ、弱り目に祟(たた)り目の状況になっているが、同社の問題点は本連載でも早くから何度も指摘してきた。日本の場合は、仕入れ先の中国企業が期限切れ鶏肉を使用していたことよりも、競争相手が同じハンバーガーチェーン店や牛丼をはじめとするファストフード店だけでなく、コンビニ、デパ地下、コーヒーチェーン店などに多様化したのに、その変化に対応できなかったことの影響のほうが大きい。
ただし、マクドナルドの業績悪化は日本だけでなく、世界的な傾向だ。11月の世界の既存店売上高は前年同月比で2.2%減少し、とくに本拠地アメリカは4.6%減という2001年6月以来の大きな下落幅を記録した。となると、マクドナルド不振の根本的な原因は、ある意味同社の構造的な問題であり、基本的な味や商品の革新性がほとんど見られないことだと思う。
ところが、フランスのマクドナルドだけは例外的に好調だと報じられている。昨年上半期の売り上げが4.8%増加して過去最高を記録し、今後も成長が続くと予想されているのだ。その理由は、フランス産高級牛のハンバーガー、バゲットをバンズ代わりにした「マックバゲット」、フランス産チーズを使った商品などを独自開発し、メニューのフランス化に力を入れたことだという。
つまり、アメリカ本社が作ったマニュアルに従って定番商品だけを販売するのではなく、“ローカルな創意工夫”を凝らしたから売り上げが伸びているわけで、それこそが今の時代の「成功のカギ」なのだ。
※週刊ポスト2015年1月30日号