相撲部屋では毎日、稽古が終わった後に鍋を食べる。その理由を伊勢ノ海親方は語る。
「ひとつの鍋をみんなで囲んで食べられるし、栄養のバランスもいい。汗をかく夏は、塩分と水分補給にもなる。冬は鍋で温まる。1日1回は、必ず鍋。稽古が終わった昼に食べますね。ただ、場所中はみんなが揃う夜が鍋になるかな」
一緒にちゃんこを食べながら話をすると、体や心の調子もわかるという。
できあがりはまず師匠から。続いて部屋付親方、関取、床山などの有資格者が食べる。若手力士はその後だ。種類も豊富なのだが、人気鍋は?
「好き嫌いはありません。味付き鍋もいいけど、ポン酢が好きですね」
伊勢ノ海部屋の勢関は笑顔でそう答える。
「ちゃんこ鍋って、お相撲さんが毎日食べている料理だから、太っちゃいそうっていう声を聞きますが、それは大きな誤解です」
そう相撲ライターのどす恋さんは解説する。
力士の体重が増えるのは、空腹で稽古をした後でちゃんこ鍋をスープ代わりにたらふく食べて、即昼寝をする生活が原因。鍋自体には野菜やきのこ類、豆腐、肉魚がバランスよく入り、煮込んでいるから消化がいい。体も温まって代謝も上がる。老若男女を問わず、みんなの体にやさしくおいしい料理なのだ。
「もともとは、安くておいしいものをたくさん食べるために生まれたちゃんこ鍋。なんでも切って入れればいいんです。だしだって、とる必要はありません。煮込めば出てくるんですから」(マネジャーの浅坂直人さん)
伊勢ノ海部屋のちゃんこ鍋は、家族的な雰囲気も魅力だ。
※女性セブン2015年1月29日号