欲しいものは何でもネット通販で手に入る時代。にもかかわらず、ビジネス展開に手間取り、いまいち認知されていないのが、店舗販売をベースに食料品や日用雑貨を自宅まで配送するサービスを行う「ネットスーパー」だ。
市場調査会社の富士経済が1月19日に発表した「通信販売(物販)の国内市場調査」によると、通販全体は2013年で7兆7634億円もの市場規模があり、2016年には10兆5352億円まで伸びると予測している。
その中で、ネットスーパーの市場は2013年でわずか916億円。今年はようやく1000億円を超えそうだというが、普及スピードは遅い。
「最近は働く女性の増加で、仕事や子育てなどの事情からスーパーで買い物ができない女性が週末にネットスーパーで『まとめ買い』をするケースも出てきましたが、本当に必要としている人は高齢者。足腰が痛くてスーパーに行けなかったり、悪天候で自宅を出るのが億劫だったり……。
ただ、そうした高齢者は日頃から商品を頻繁に注文するほどネット環境に馴染んでいないばかりか、ネット販売の仕組みがあること自体知らない人が多いのです」(富士経済・東京マーケティング本部の栗田洋一郎氏)
実際、名の知れた大手スーパーは比較的早い時期からネットスーパー事業を始めている。2000年に西友がサービスを開始したのを皮切りに、翌年にはイトーヨーカ堂、イズミヤ、そして2007年以降はイオン、ダイエー、サミット、大丸ピーコックなどが続々と参入した。
しかし、昨年、サミットの親会社である住友商事がネットスーパー事業から撤退するなど、採算性の悪さが浮き彫りになっていた。
「サミットのネットスーパーは会員数30万人を集めながら、年間10億円を超える赤字体質から抜け出せずにいました。その理由は嵩む物流コストを売り上げでカバーできなかったからです。
ネットスーパーの商品は生鮮品や日配品を扱っているため、各店舗から顧客へ直接配送するスタイルが一般的でしたが、どれも単価の安い品ばかりで店舗の人材も限られているため、サミットのように専用の物流拠点を構えて、より広範囲に配送する仕組みを取るスーパーが増えました」(流通専門誌記者)