テレビはもうオワコンで誰も見ず、ネットが中心の時代になった。少し前まで、そのようにメディア論が語られることもあったが、果たしてそうだろうか? コラムニストの亀和田武氏が、メディアの中心はいまだテレビにあり、ネットはそれを補完するものである現状について解説した。
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テレビに明日はあるか?
大丈夫、明日はある。明後日もある。一年後、二年後も、テレビはメディアの中軸として機能しているはずだ。しかし五年後、十年後まで現在のパワーを有しているかとなると、これは判らない。
このままネットなど新しいメディアに取って替わられるかと思われていたテレビに曙光(しょこう)が射したのは、一昨年の朝ドラマ『あまちゃん』だった。大河ドラマと並び、旧態依然たるテレビの象徴と思われていたNHKの朝ドラマが、なんと国民的関心事のトップに躍り出た。
活字メディアはもちろん、ネットでも、人びとは『あまちゃん』を語って飽きることがなかった。視聴者の主流はシニア層で、やがては消えていく番組枠。そう思われていた“朝の連続テレビ小説”が、独創的なクリエイター、そして清新なヒロインによって一気に蘇生した。
若い熱心な視聴者が大量に参入し、これまで朝ドラを支えたシニア層も、新しくファンキーな笑いを、好意的に受け容れた。NHKの朝ドラが世代や職種、性差などのギャップを埋めるツールになる日が到来するとは。
ネットの住民が熱くドラマを語るのも、目を惹いた。門外漢の言葉と聞き流してほしいが、やはりメディアの中心はいまなおテレビで、ネットはそれを補完するものだ。若手の社会学者が、ネットそれ自体からスターやブームは生まれませんよとクールに語っていた。いま、こんな現象がネットでは大注目されています。そんなふうに活字やテレビが大々的に報じて、初めて認知されるのだと。
※SAPIO2015年2月号