日本気象協会によると、今年のスギ花粉の飛散量は東日本を中心にかなり多いと予測されているが、そんな花粉の猛威に備えるべく、今、注目されているのが「菌活」だ。なぜ菌活が花粉症に効くのか。東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎さんが説明する。
「菌活で腸内環境を整えれば、花粉症を抑えられます。花粉症は、腸内細菌のバランスの乱れによって起きます。人間の腸内には約3万種類、約1000兆個もの腸内細菌が存在し、免疫力の約7割をつかさどっているといわれています。
免疫細胞には、がん細胞などを攻撃するTh1細胞と、アレルギーを抑えるTh2細胞があります。アレルギーの原因となる物質が体内に侵入した際、Th2細胞の働きでIgE抗体がつくられ、攻撃を開始します。
本来、花粉は体に害がないものですが、食生活の乱れやストレスなどによって免疫細胞のバランスが崩れ、Th1細胞よりTh2細胞の方が増えてしまうと、IgE抗体が過剰に反応し、体内に侵入してきた花粉を攻撃するようになる。これが花粉症を引き起こすしくみです」
腸内細菌は大きく分けて、 善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌の3つに分けられる。
「悪玉菌が増えると、Th2細胞が増えてしまいます。反対に善玉菌を増やせば、Th1細胞とTh2細胞の均衡がとれ、花粉症は抑えられる。日和見菌は優位な方に加担する菌ですから、菌活をして腸内の善玉菌を増やして日和見菌を味方につけ、バランスを“善”に傾けることが大切なのです」(藤田さん)
乳酸菌のような善玉菌をサポートし、腸内環境を整える菌が存在する。積極的に取り入れたいところだ。
「納豆に含まれる納豆菌は熱や酸に強く、腸内で活性化して善玉菌を増殖させる働きがあります。それだけでなく、サルモネラ菌や病原性大腸菌、カンジダ菌など、悪玉菌の活動を弱める効果もわかっています」(藤田さん)
日本ナットウキナーゼ協会によると、納豆菌と混合培養したサルモネラ菌や病原性大腸菌は、3日後にはほぼ死滅することが判明。カンジダ菌については発育が阻害され、48時間後には半減することがわかった。
「乳酸菌をサポートするのは納豆菌だけではありません。みそや塩麹、甘酒などに含まれる麹菌ときのこ類には、βグルカンという免疫力を高める成分が含まれています。このβグルカンは乳酸菌との相性がよく、同時に摂取することで人間の生体防衛機能を高め、アレルギーを抑制します。
また、ナタデココや食酢に含まれる酢酸菌には腸内を酸性にする作用があり、酸性を好む善玉菌が活性化する。直接、免疫細胞のバランスを整える効果がなくても、乳酸菌を活性化させることで、間接的に花粉症対策に役立つのです」(藤田さん)
※女性セブン2015年2月5日号