近ごろ、コンビニエンスストアにドラッグストアや調剤薬局が併設されている「複合店」を多く見かけるようになった。食品や総菜などはもちろん、夜中でも大衆薬(一般用医薬品)や日用品が手に入るとあって、コンビニ客の主役だった男性よりも女性や高齢者の姿が目立つ。
1月27日にはコンビニ業界2位の「ローソン」と北海道を拠点に全国約1300店を持つドラッグ業界2位の「ツルハドラッグ」の大型提携発表があった。ツルハがローソンとフランチャイズ契約を結び、生活密着の商品を強化した“ヘルスケアローソン”を運営していくという。
しかし、いまや5万店・10兆円市場のコンビニ、1万7000店・6兆円規模のドラッグストアと、どちらも成熟した小売り業態が一緒になるメリットがどこにあるのか。
ツルハホールディングス社長の堀川政司氏は同日の会見でこう説明した。
「2035年には3人に1人が65歳以上という高齢化が進む中、自宅から徒歩で行ける店舗で買い物を済ませようという消費者がますます増えるでしょう。そこで、郊外にある300坪規模の大型店が中心だった当社も、駅から徒歩5分、350メートル以内に出店するような小商圏での店舗展開が必要になると考えました」
<より完成度の高いドミナント(出店)エリアの構築>と表現した堀川氏。その実現のためには、網の目のように全国津々浦々に小型店舗を張り巡らせるコンビニのノウハウを吸収したかったというわけだ。
ドラッグストアの中には、サンドラッグのように自前でコンビニ業態に乗り出す企業もある。ツルハがその選択肢を取らなかった理由について堀川氏は、「決め手は簡単ですよ」と答え、こう続けた。
「われわれにはコンビニと同等かそれ以上の味と価格を兼ね備えた『弁当』が作れないからですよ。やはり“餅は餅屋”なんです」
コンビニの売り上げを大きく左右する弁当や総菜といった中食市場を握らない限り、他社との差別化はできない。かといって、ドラッグストアにはコンビニが持つ専用の調理工場はないし、弁当の開発部隊もいない。それでは小商圏で売り上げを確保するのは難しいと踏んだわけだ。
一方、コンビニサイドのローソンとしても、ドラッグストアと組む利点は大きい。
「従来の便利さ以上に生活全体をサポートしてほしいという地域のニーズがある中、ドラッグストアの強みである大衆薬や化粧品、日用品カテゴリを強化することで客層や売り上げの拡大が見込める」(ローソンの玉塚元一社長)
すでにローソンは調剤薬局大手のクオールと組むなど、医薬品や日用品を取り扱うヘルスケア店舗を増やしているが、既存のローソン店舗と比べて日販20万円増、客数200人増、客単価も50円アップしているとのデータを示した。