2014年12月14日が投票日だった衆議院議員選挙の投票率は、小選挙区52.66%、比例代表52.65%の戦後最低だった。この低い投票率の原因として、本質的な問題は小選挙区制にあると指摘する大前研一氏が、その理由を解説する。
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なぜ私は小選挙区制導入に反対したのか? 小選挙区制になると、1選挙区(=衆議院議員1人)当たりの平均有権者数が約35万人の“市長レベル”になってしまい、その結果、二つの弊害が出てくると考えたからである。
一つは議員が「長居」をすることだ。小選挙区だと、新人が現職に勝つのは難しくなる。市長は4期以上の多選が珍しくないが、それと同じことが衆議院議員でも起きてしまう。実際、先の総選挙では当選者の85%が前職(再選)だった。
もう一つは、市長レベルの小さい選挙区から出てくると、どうしても地元への利益誘導が政治活動の中心になり、天下国家を論じて外交、防衛、経済といった日本の長期的な課題に国政レベルで取り組む議員がいなくなることだ。中選挙区制(定員3~5人)の時は、外交、防衛、経済などを専門にする政治家が3番目や4番目で当選していたが、小選挙区制になって以降、そういう衆議院議員はほとんどいなくなった。
たとえば東京23区には17の選挙区がある。ということは、東京都区部の衆議院議員の地盤の大きさは、区長とほぼ同じだ。あるいは横浜市には8人も衆議院議員がいる。区長レベルの衆議院議員や横浜市長よりもスケールの小さい衆議院議員に天下国家を論じられるわけがないだろう。
したがって私は、小選挙区制が導入されたら取り返しのつかない膠着(こうちゃく)化した状況になると警鐘を鳴らし、むしろ衆議院は道州単位で平均10人ずつ、日本全体で100人くらいの大選挙区制にして天下国家を論じられるようにすべきだと主張したのである。
※週刊ポスト2015年2月6日号