用意された資料をひたすら読む実況に、選手や技の名前を何度も間違える解説者。そしてスタジオには、その競技を知らない視聴率稼ぎのアイドル…。
日本人選手が世界で活躍する時代となり、お茶の間の知識もレベルが上がっているというのに、テレビから聞こえてくる「だからナニ?」といった解説に不満を覚える視聴者も多いはず。
人気のある大会や試合の場合、衛星放送と地上波両方など、複数の局で放映をすることもあり、実況や解説のメンツによって、視聴する局を選んでいるという人も少なくない。マニアになると「音声を消す」「副音声にする」などの策を講じたり、「映像はテレビ、音声はラジオ中継で」というテクニックを駆使する人も。そこまでしたくなるほど、スポーツ好きにはイラッとする実況や解説が多いのだ。
数々の名実況で知られる元NHKアナウンサーの山本浩さんは、「しゃべらないこともわれわれの仕事のひとつ」と、放送席のあり方を語る。
「例えば、サッカーでゴールが決まりますよね。決まった後に余韻を残して、視聴者が酔うための時間をつくるんです。われわれがしゃべり続けてしまうと、気持ちよく酔えないので、いいたいことがあってもそこはちょっとブレーキをかける。
視聴者が家族や友人と、わーっと盛り上がる時間、その“間”が必要なんですね。寿司桶に寿司がギッシリ詰まっていたらまずそうじゃないですか。それと同じです。やはり適度に間隔が空いていないと、うんざりして見たくなくなる」
※女性セブン2015年2月12日号