放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能界事情を斬る連載「芸能耳年増」。今回は、このところグッと業界の注目度が増している女優・吉田羊を分析。
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昨年、SMAPの木村拓哉主演の『HERO』(フジテレビ系)に新キャストとして加入。名前と顔がやっと全国区となり、以来、『オモクリ監督~O-Creator’s TV show~』(フジテレビ系)、ポカリスエットのCM、そして今期は『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(TBS系)、『木曜時代劇「風の峠~銀漢の賦~」』(NHK)と連続ドラマを掛け持ちするほど売れっ子になったのが女優、吉田羊だ。
私が彼女を発見したのは6年前。向井理主演の『傍聴マニア09~裁判長!ここは懲役4年でどうすか~』(日本テレビ系・読売テレビ制作)。向井と共に裁判を傍聴する先輩マニア、六角精児の役が「ビューティ星川」と呼ぶ美人検事役をしていたのが吉田羊だった。
その後、同じく向井理が出ていた『ゲゲゲの女房』(NHK)では化粧品会社の営業部長、続いて、夏菜主演の『純と愛』(同)では、男性部下を仕切るホテルウーマンでありながら、社長役の舘ひろしとの“過去”がある女性を好演。その後、彼女をヒロインにしたスピンオフドラマ『富士子のかれいな一日』(NHK BSプレミアム)がオンエアされるほど、スタッフにもおもしろがられていた女優だったのだ。
サランラップのCMで、V6の岡田准一に階段の上から「あなた、ほんとにそれでいいの?」と叫ぶ女性も吉田羊。『町医者ジャンボ!!』(日本テレビ系・読売テレビ制作)でEXILEの眞木大輔を叱咤激励する看護師も吉田羊だった。
その頃、「取り上げるなら今だ」と思い『女性セブン』連載の“山田EYEモード”で対談させてもらった(2013年7月)。ナマの吉田羊は、『純と愛』での役、桐野富士子によく似た、酸いも甘いもかみ分けたアラフォーのキャリアウーマンそのもので、トークのセンスも抜群にある、魅力的な女性だった。
吉田羊のファンは自分たちのことを「ヒツジスト」と呼び、彼女のブログ『放牧日記』に熱心にコメントを寄せている。検事、ホテルウーマン、看護師、女医…などなど、キャリアウーマンを演じさせたら右に出る者はいない吉田羊が『HERO』に出演したことで、私のように(!)「実は前から知っていた」と言い出す人が増えているように思う。
ちょっと驚いたのは、『ボクらの時代』(フジテレビ系)に合コン仲間である津川雅彦と奥田瑛二が出たときである。女子アナやCA、モデルらがメンバーだった合コンには「後で有名になった子もいる」と津川が言い、そこで名前があがったのがSHIHOと吉田羊だった。ちなみに、女性メンバーを集めていたのは奥田である。
実はその合コンには明石家さんまも参加することが多かったのだが、『さんまのまんま』(同)に吉田羊が出演したとき、二人は「初めまして」と挨拶していたので、吉田羊は、さんまさんが不参加の会に来ていたのかもしれない。
続いては、同じく『ボクらの時代』で、福岡県人の陣内孝則、博多華丸、パンクブーブーの黒瀬純が集まったときのことだ。「いきなり『HERO』に出て来てビックリした」「だって、県人会(福岡県出身の芸能人が集まる飲み会)に来てたよね?」と3人が名前をあげたのが無名時代の吉田羊だった。
仲間と小さな劇団をやっていた彼女が現在のマネジャーにスカウトされたのはそれほど前の話ではない。Wikipediaにも「転機」として記されているのは、2008年に出演した連続テレビ小説『瞳』(NHK)に看護師役で出ていた吉田をリアルタイムで見ていた中井貴一の目に留まり、その後、三谷幸喜を紹介され、少しずつ認知されていく、とある。
だが実は吉田は、中井、三谷以外の有名人とも多数接点をもち、自ら、売り込んでいったのだと思われる。
さらに、仕事がないときは、マネジャーに撮影させたり自撮りしたりして、食べ歩きする模様や、一人カラオケの映像をアップ。少しでも多くの人に「おもしろい女優がいる」と言ってもらうように努力していたのである。
その甲斐あって、『さんまのまんま』に出演したときは、表情豊かに自虐ネタを披露したり、見事な歌声で明石家さんまと『アナと雪の女王』コントをやりきったり、完璧なノリツッコミ満載で、お笑い怪獣・明石家さんま最大の褒め言葉「絶対、もてへんやろ」をもらった吉田羊。
自らのハマり役のように、アラフォー女優・吉田羊は、ロビー活動ともいうべきネットワーキングで、今の地位を獲得したのである。
今年は『脳内ポイズンベリー』はじめ3本の映画にも出演が決定している。ギョーカイではかなり早い時期から“ヒツジスト”だった私も、嬉しい次第だ。