核家族化が進む現代において、二世帯住宅は親子間の“付かず離れず”の関係を可能にする人類の知恵だが、亡き妻の両親にリフォーム代を出した場合、返金してもらえるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
妻の両親から同居の申し入れがあり、了承した際に二世帯住宅にしたいので700万円出してほしいといわれ、それも了解しました。しかし、同居を始めてすぐに妻が急死。私は家を出るつもりなのですが、両親はお金を返さないといっています。こういう場合、私は一銭も返してもらえないのでしょうか。
【回答】
リフォーム後の建物は、将来的に亡妻が相続することから、安心して資金を出したものと思います。亡妻の親との間では、700万円を拠出する代わりに、ずっと住むことができるという程度の合意があったのでしょう。しかし、それだけでは税務上、亡妻の親に贈与税が課税される心配があり、建物を区分建物にして、一部をあなたの名義にするとか、共有にする工夫がされるのが普通です。
もし、こうした手当てがあれば、これに従った処理ができますが、何も無ければ、あなたは妻と居住できる条件付きで、亡妻の親に贈与したと解釈される可能性があり、そうなれば返金要求は無理です。
ですが、亡妻と共にその親と二世帯生活を終生営むため、改装資金を出したことは、共同生活への一種の出資と考えることができます。解消の予定はなかったでしょうが、妻が急死すれば、血縁のないあなたが、同居を止めるのも仕方のないことです。
つまり、あなたに責任がない事情で、出資の目的が達成できなくなるという大きな事情変更が起きたことになります。その場合、出資契約を解除し、将来に向けてその効力を終了させ、700万円の出資の根拠も失わせるとの理屈が考えられます。
この考え方に基づけば、亡妻の親に不当利得として拠出金を返還請求できることになります。ただ、改装後間もないとしても、現金から形の変わった建物のリフォームの増価値分を同額に評価するのは困難でしょうし、同居しないのであれば、親にとっても改装は無駄だったことになりそうです。
妥当な返金額はなんともいえません。拠出金が夫婦財産で子供がなければ、親も法定相続人で3分の1の相続分を主張できます。単純な贈与と解される可能性もありますから、親の意見も聞いて、落ち着きどころを探してください。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年2月6日号