パンク・ロック、ハードコア、ラウドロック、ヘヴィメタルなど、さまざまなライブ会場で見られる「モッシュ」という現象。会場の熱気が高まると、客がリズムに乗り、密集状態で無秩序に動き、回転などをしながら体をぶつけ合うといった行為だ。そんなモッシュ中に、セクハラ行為がたびたび問題になっていると話すのは「J-Rockが好き」だという男性Aさん(27歳・メーカー勤務)だ。
「ラウドロックやハードコアなどの激しいライブではなくてもモッシュが起こることはよくあります。下北系の流行のバンドなどでも、会場の一部にモッシュエリアができて、男性たちがふざけて女性にぶつかっていくこともある。
そういう現場では、その場のテンションでわざと女性をまきこんで、あとから『さっきはごめんなさい!』という感じでナンパが始まることもあります。そういう『出会い系モッシュ』はあざとくて音楽ファンとして許せないですね」(Aさん)
こうしたモッシュ行為中のセクハラがトラウマになっているという女性もいる。オールナイトで開催されるロック・フェスで痴漢にあったという女性・Bさん(24歳・雑貨店勤務)はこう話す。
「今までオールナイト系のフェスで何度も痴漢にあっています。モッシュが起こると、そこで胸を揉まれたり抱きついてきたりする男性がいてトラウマですね。飲酒している人も多いのでテンションが上がってしまうのかもしれませんが、その場のノリで許される行為ではない。
モッシュはパフォーマンスに対してファンが応答する行為だと思う。行為自体を禁止するのではなくて、マナーを守ればよいだけの話です」(Bさん)
こうした心無い客がいる一方で、なかにはマナーを守って楽しむファンや、バンド側の気遣いもあると話すのはラウドロック系のバンドや、ビジュアル系のバンドのライブによく行くというCさん(26歳・男性)だ。
「もちろん倒れたら助けてくれたり、気遣ってしっかりと謝ってくれる人も多いので、悪い人ばかりだと勘違いされたくないですね。『モッシュ行為で怪我をしないように。男は倒れた女の子を助けるように』と注意喚起するバンドもたくさんあります。
女性はモッシュエリアに入るなという意見や、自己防衛しろ、という人もいるかもしれませんが、それには限界がありますから。女性はピンヒールの靴などを履かない、男性は周りを気遣う、というのは最低限のマナーですね」(Cさん)
音楽ジャンルによって盛り上がり方はさまざまだが、バンド側の注意やライブハウスの規約などを守り、マナーを共有したうえで音楽を楽しみたいものだ。