中国では習近平指導部による「ぜいたく禁止令」が声高に叫ばれているが、この10年間でゴルフ場は3.6倍に増え、計639か所に達していることが分かった。
ゴルフは官民の癒着を生むのに加え、ゴルフ場建設で乱開発による環境汚染が進むほか、中国では飲料水の不足が深刻化するなか、芝生の育成などで水を大量に必要とするなど、「百害あって一利なし」とされているが、土地売買の収入を目当てに、地方政府がこっそりと裏で手を回しているようだ。
中国にゴルフが入ってきたのは改革・開放路線導入6年後の1984年で、当時の趙紫陽・首相ら党政府高官が競ってプレーに励むなど、中国人の間でゴルフブームが起きた。外国人企業家らプレーしながら商談を進め、親交を深めるというビジネス的にスマートなスポーツであり娯楽だったからだ。
1989年の天安門事件後で、西側諸国の対中制裁もあって、西側のスポーツであるゴルフは毛嫌いされ、一時ゴルフブームはなりを潜めたが、その後、ゴルフ人気は復活し、ゴルフ人口は2004年には100万人を突破した。
しかし、農地のゴルフ場転用など土地の乱開発のほか、中国全土で慢性的な水不足もあって、中国政府は同年、「ゴルフ場の一時的な建設中止通知」を出したほか、その後もこれまで10回にわたって、同様の通達を地方政府向けに出している。
しかし、昨年末時点でのゴルフ場の数は639件と、2004年の178件の3.6倍にも達していることから、中国政府のゴルフ場建設禁止令は効果がないのは明らかだ。
この裏には、地方政府の姑息な書類操作がある。業者によるゴルフ場建設を認可する際、中央政府の禁止措置に抵触しないように、「ゴルフ場建設」とはせず、「レジャー施設」とか「スポーツトレーニングセンター」、あるいは「旅行客向けリゾート」との名目にするのだという。
ゴルフ場は広大な土地を必要とするだけに、地方政府にとって、土地売買に伴う利益は莫大な額に達する。また、富裕層を呼び込めるゴルフ場は、地方政府にとっても「打ち出の小槌」だからだ。
しかし、こうしたカラクリは当局もお見通しで、昨年から強硬策に転じており、すでに取りつぶし措置を受けたゴルフ場は全国で10か所は下らないと中国青年報は報じている。同紙は「習近平主席の腐敗一掃キャンペーンやぜいたく禁止令の徹底で、今後はゴルフ場関連業者の一斉摘発が本格化するだろう」と予測している。