1月25日、東京・千駄ヶ谷で行なわれた『フェチフェス』。
百を超えるブースの数だけ、多様な性的嗜好に応えるフェチがある。あちらで肌も露わな美女がファンの顔を巨乳に埋めて写真を撮っていれば、こちらで緊縛師が制服コスプレの女性を縛っている。超満員の客の熱気とアーティスト、パフォーマーの息吹が充満する空間だった。
私が最初に体験したのは30数年ぶりの肩車。うわぁ、肩車ってこんなにも相手の首の感触が太腿に伝わるものだったのか。
続いて拘束具を販売するブースでは5本の指を金属部品で固定されて、思わず子宮まで締めつけられる快感を覚えてしまい、アダルトグッズの販売ブースでは電動オナホールに指を挿れた途端、取り憑かれたかのようにぐりぐりと擦りだしていた。ひょっとして指性感という新たな扉を開いたのだろうか。
強烈な刺激を受けつつも、不思議な安心感に包まれるひとときでもあった。フェチとは孤独な愉悦であると同時に、生きるための力にもなる。「これしかない」ものを突き詰める人間のエネルギーが、いまも体内でうねっている。
文■うかみ綾乃:作家。2011年にデビューし、『蝮の舌』(小学館クリエイティブ刊)で団鬼六賞受賞。近著に『贖罪の聖女』(イースト・プレス刊)、『ドミソラ』(幻冬舎刊)など。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2015年2月13日号