原発性アルドステロン症は、何らかの原因で副腎(ふくじん)のアルドステロンが過剰産生され、塩分が体内で増えることで、血圧が上昇する病気だ。アルドステロンは、塩分や水分を体内で保持する働きをするホルモンで、副腎で産生されている。
かつて生物の多くは海で暮らしていた。その後、陸に上がり周囲に塩分がなくなったため、体内から塩分が失われ脱水症状を起こす危険性が出てきた。それを予防するホルモンがアルドステロンだ。現在は食事で大量の塩分摂取ができており、アルドステロンは働く必要がなくなっている。
横浜労災病院内分泌代謝内科の齋藤淳部長に話を聞いた。
「原発性アルドステロンは、血圧が高いだけで自覚症状はありません。若年から中高年まで幅広い年齢で発症し、放置すると通常の降圧剤でも血圧コントロールが難しくなるなどの特徴があります。塩分とアルドステロンが増えると血管がダメージを受けるので、治療しないと一般的な高血圧よりも早く、脳卒中や心臓疾患など合併症や腎臓の機能低下が起こります」
腫瘍が原因の原発性アルドステロン症の8割は、手術で治る。しかし、残りの2割は腫瘍が複数あったり、両側にあるなど手術だけの治療では難しい。その場合、腫瘍が原因でないケースと合わせ、アルドステロンの働きをブロックする内服薬を服用する。
近年、内臓脂肪肥満者がダイエットしたところ、アルドステロンの産生が減り、血圧が下がったという報告もある。進化の末に起こった現代病といえるかもしれない。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年2月13日号