国内にある総住宅数6063万戸のうち、空き家は約82万戸で、空き家率は過去最悪の13.5%を記録している(総務省「住宅・土地統計調査」2013年調べ)。地方にある実家を都会に住む子供が相続したのち、そのまま放置する人が多いためだというが、問題は一戸建てだけにとどまらない。千葉県内のマンションに住む元会社員・Aさん(64)がいう。
「東日本大震災でヒビが入るなどの被害が出たこともあり、マンションの大規模修繕と耐震工事をやろうと管理組合で決めたんです。しかし空き室になっている部屋の権利者やその家族と連絡がつかない。大きな地震が来たらと思うと心配です」
東京都郊外のマンションに住む元会社員・Bさん(72)も肩を落とす。
「亡くなったり、郊外から都心に引っ越す世帯が多く、もはやマンションの管理組合が機能していない。理事のなり手がいない程度なら仕方ないが、管理費が十分に集まらないので困っている。共有部は荒れ果て、ネズミやゴキブリが大量に繁殖している」
住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「管理費の滞納」についてこう指摘する。
「居住していなくても、所有者は管理費や修繕積立金を管理組合に支払う義務を負う。しかし現実には滞納している所有者が多い。
管理会社は管理組合との管理委託契約に基づいて所有者に管理費を督促しますが、電話をかけたり手紙を出したりする程度で強制力がない。管理組合は1年ごとに役員が交代するので、みんな面倒ごとを避けて管理費滞納問題を先送りしてしまう。そのため、回収できなくなってしまうのです(最高裁判例によれば、管理費の請求権は5年で時効になる)。
滞納率が3割を超えると、一般的なマンション管理は難しくなり、清掃や機械式駐車場の修理ができなくなるなど、入居者の生活に支障が出てきます。採算が合わないと判断した管理会社が管理委託契約を更新しないケースも出てくる」
その先に待ち受けるのは、「幽霊マンション化」という最悪のシナリオだ。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)の著者で不動産コンサルタントの長嶋修氏も、空き家の危険性を指摘する。
「高度経済成長期に建てられたマンション群は、居住者の高齢化が進み、空き家が増えている。東京の多摩ニュータウンが典型的でしょう。1棟50戸のうち5戸しか入居していないという物件もある。空き家が多いマンションでは孤独死の恐怖とも隣り合わせです」
※週刊ポスト2015年2月13日号