2月1日、宮崎と沖縄でプロ野球12球団が一斉にキャンプインした。今でこそ選手の宿舎はリゾートホテルが中心で個室が与えられているが、昔は和室の大部屋が主流だった。監督以外はスター選手でも良くて相部屋、大部屋で雑魚寝も珍しくなかった。金村義明氏の話。
「忘れもしない入団1年目の高知県の宿毛キャンプ。プロはどんな豪華な施設に宿泊できるのかと思っていたら、一軍のキャンプだというのに30畳くらいの大広間に9人で雑魚寝ですよ。
隙間風もすごくて寒い寒い。荷物を送ったときの段ボール箱を解体して、布団の周りを囲うように紙の壁を立て、ジャージの上にダウンを羽織って寝ていました。キャンプに行って最初に学んだことは、段ボールって暖かいってことでしたね」
当時は雨天練習場もないため、雨が降れば休みになった。江本孟紀氏は「とにかく麻雀ばかりやっていた」と語る。
「昔のキャンプは麻雀大会みたいなものですわ。雨が降ったら麻雀、晩飯が終わったら麻雀。キャンプに来て、麻雀のやり過ぎで腰を痛めるヤツまでいましたからね(笑い)」
練習が終われば夜の街へ。前出の金村氏は忘れられない思い出がある。
「宮崎県の日向でのこと。スナックが多くて夜が楽しい街なんですが、ある晩、門限を過ぎた時刻にばったり仰木彬コーチに出くわしてしまったんです。
でも仰木さんは怒るどころか御馳走してくれました。酒を飲みたいが、翌日のためにある程度は抜かなきゃいけないので、スナックにカッパを着てランニングして通うようなコーチでしたから」
※週刊ポスト2015年2月13日号