緑茶やほうじ茶に代表される日本茶のほか、紅茶、マテ茶などペットボトル入りの「お茶飲料」は多数売られているが、しばらく人気が下降線をたどっていたのが「ウーロン(烏龍)茶」だ。
月刊誌『飲料ビジネス』を発行する飲料総研によれば、2014年のウーロン茶市場は対前年比91%の6050万ケース(1ケースは500ml×24本換算)の出荷量を誇っているものの、この15年で市場は半減したという。
ウーロン茶低迷の主な要因は、飲料メーカーが次々と発売する緑茶や無糖紅茶など新ブランドの選択肢が増えて市場を奪われたこともあるが、サントリー(食品インターナショナル)が長年シェアを独占してきたことが大きい。
飲料総研の宮下和浩取締役が解説する。
「1981年に発売した『サントリー烏龍茶』は、ウーロン茶に含まれるポリフェノールが脂肪の吸収を抑えるということで健康ブームに乗って一般家庭に普及しました。また、夜の街のノンアルコールドリンク、またはチューハイのウーロン茶割りに使われるなど外食店ルートでの広がりもみせました。
1980年代半ばにはPB(自主企画商品)の氾濫で大手ブランドのウーロン茶は次々と撤退を余儀なくされましたが、サントリーだけは食事との相性を打ち出し続けて唯一ブランドを守ってきました」
2006年には健康機能をさらに訴求したトクホ(特定保健用食品)の「黒烏龍茶」を発売して、ウーロン茶市場で「敵なし」の地位を揺るぎないものにしたサントリー。
飲料総研の市場調査(2014年)でも、サントリーは烏龍茶と黒烏龍茶を合わせた出荷量が3380万ケースで、56%のシェアを握っている。2位の日本コカ・コーラ「煌(ファン)」が790万ケース(シェア13%)、3位の伊藤園「ウーロン茶」が520万ケース(同9%)と比べても圧倒的に売れていることが分かる。
だが、王者のサントリーをもってしても、“ウーロン茶離れ”の現象を食い止めるまでには至っていない。
「近年は烏龍茶よりも『GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶』、黒烏龍茶よりもトクホ『伊右衛門 特茶』の自社商品が販売好調で、今年の国内主要ブランド計画では普通の烏龍茶だけマイナスの出荷予測を立てているほどです」(前出・宮下氏)
そんな中、他社が再びウーロン茶の新ブランドを開発して、サントリーの牙城を崩そうとしている。3月9日にはポッカサッポロフード&ビバレッジが『日本烏龍』を、同16日にはコカ・コーラが『日本の烏龍茶 つむぎ』を相次いで発売するのだ。
両商品に共通しているのは、日本産の茶葉を使い、独特の苦みをなくしてスッキリとした後味に仕上げている点だ。
ウーロン茶の生産といえば、本場は中国や台湾などのイメージが強いが、「緑茶も紅茶もウーロン茶も原料は同じ茶葉で、発酵のさせ方によって味が変わるため、国内で生産することは可能」(大手飲料メーカー社員)だという。さらに、「国産を謡うことで消費者に“安心・安全”をアピールする」(同前)狙いもある。