ビジネス

薬局増で薬剤師不足が深刻化 「初任給30万円」でも雇えない

調剤薬局で薬カルテの未記載が発覚した「くすりの福太郎」

 団塊世代が75歳以上になる『2025年問題』も控え、高齢化社会のクスリ需要は高まる一方。そこで、ドラッグストアやコンビニが「調剤薬局」とタッグを組み、市販薬だけでなく医師の処方薬を扱う併設店を増やしている現況は当サイトでも度々報じてきた。

 だが、早くも異業種参入による過当競争の弊害が露呈してしまった――。

 大手ドラッグストア、ツルハホールディングス傘下の「くすりの福太郎」が展開していた調剤薬局で、患者の薬剤服用歴、いわゆる“薬のカルテ”を作成していない事例が17万2465件も判明したというのだ。

「調剤薬局の収入は薬剤料のほかに、調剤技術料や患者の薬歴を記録保存する『薬学管理料』で成り立っている。いくら医師が処方した薬でも、日ごろ服用している薬との飲み合わせや、過去の症状から見た副作用の可能性などで疑問が出れば、薬局から医師に確認する場合もある」(都内にある調剤薬局の薬剤師)

 薬カルテの作成は、患者の健康を守るうえで欠かせない薬局業務で、これを怠れば調剤報酬が不正に請求されたものとして、厳しく追及されるのは当然だろう。

 現在、福太郎や医薬業務を管轄する厚生労働省が詳しい実態把握を行っているというが、今回の問題が起きた背景として真っ先に考えられるのが、慢性的な薬剤師不足だ。

 朝日新聞の報道(2月10日)でも、<薬剤師が足りず、薬歴を書く余裕がなかった>という福太郎関係者のコメントや、薬剤師不足から他店への派遣機会が増えていた実態が明らかにされている。

 なぜ、ここまで薬剤師が足りないのか。流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏がいう。

「大手ドラッグストアの参入により調剤薬局の店舗数が急増したのはもちろん、24時間店舗も出るなど長時間営業が進み、1店舗あたり3人といわれる必要最低限の薬剤師すら確保できない状況です。そこで、各社とも薬剤師の初任給を高くしたり、資格を持っている人の中途採用やパートタイマーの薬剤師を掻き集めたりと苦労しています」

 薬学系大学の就職動向調査によれば、大手薬局の初任給は平均26万~28万円。ドラッグストアに至っては30万円超も珍しくないという。現場からは、「薬剤師の囲い込みは年々難しくなっていて、人件費の高騰に見合った収益が上げられない」(中堅ドラッグストア関係者)と悲鳴が聞こえてくる。

 そこまで“売り手市場”の薬剤師だけに、国家試験の志願者が急増して将来は人手不足も解消するのでは? と安易な予測もできるが、実態はかなり深刻なようだ。

「薬学部を新設する大学は増えたが、少子化による入学者数の減少や薬学教育6年制が導入されたために、志願者数は2004年のピークから半減して現在は7~8万人。人が思うように集まらないために偏差値も下がる傾向にあります。

 レベルの低下は薬剤師国家試験の結果にも響き、昨年の合格率は過去最低の60.84%(7312人)。薬剤師不足は長期化する見込みで、“調剤助手”制度を導入すべきという声も挙がっています」(大学受験予備校)

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
〈一緒に働いている男性スタッフは彼氏?〉下北沢の古着店社長・あいりさん(20)が明かした『ザ・ノンフィクション』の“困った反響”《SNSのルックス売りは「なんか嫌」》
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
《“手術中に亡くなるかも”から10年》79歳になった大木凡人さん 映画にも悪役で出演「求められるのは嬉しいこと」芸歴50年超の現役司会者の現在
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
2000年代からテレビや雑誌の辛口ファッションチェックで広く知られるようになったドン小西さん
《今夏の再婚を告白》デザイナー・ドン小西さんが選んだお相手は元妻「今年70になります」「やっぱり中身だなあ」
NEWSポストセブン