勢力範囲を拡張せんとし、日本・フィリピン・ベトナムら周辺各国といざこざを繰り返している中国。なぜ、彼らは横暴を続けるのか。その狙いについて、ジャーナリスト・惠谷治氏が指摘する。
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現在の中国は、陸上で国境を接する14か国のうち、インドとブータンを除く12か国と国境線の画定を、2010年までに終えている。とはいえ、中国共産党は東南アジアの冊封国(異民族支配者に対し、王号や官位を与え統治を認める代わりに定期朝貢や臣礼遵守を義務付けたのが19世紀の清朝末期まで続いた冊封体制)を、自国の勢力範囲と考えていると思われる。
中国共産党は、1982年、人民解放軍近代化戦略の一環として、「第1列島線」という戦略構想を打ち出した。九州から南下する第1列島線は、勢力範囲の境界線にほぼ重なり、東シナ海、南シナ海やマラッカ海峡など日本のシーレーン(海上輸送路)を支配下に置こうとしている。
そして、空母を運用し、インド洋進出を目指すとともに、伊豆諸島からパプアニューギニアに至る「第2列島線」までの制海権を確保し、将来は米海軍と太平洋を東西二分割して支配するという戦略目標を掲げている。
現代中国の皇帝(共産党総書記)は、潜在的領域を示す赤線から飛び出して、東アジアのみならず太平洋やオセアニア、南米、インド洋、アフリカにまで、新たな冊封体制を構築しようとしている。
※SAPIO2015年3月号