ビジネス

アベノミクスの株価上昇の影に中国による日本買い指摘される

 アベノミクスで日本の株価は大きく上昇したが、それは単に金融緩和による物だけではない。そこには中国の影が見え隠れしている。中国経済に詳しいRFSマネジメント・チーフエコノミストの田代秀敏氏が解説する。
 
 * * *
 5年ほど前から、トヨタやソニー、東京電力など80社以上に及ぶ日本の大手企業の株を片っ端から買い漁る謎の投資家の存在が取り沙汰されてきた。「SSBT OD05 オムニバス・チャイナ・トリーティ」など、”チャイナ”を冠した複数の名義をもつ謎の株主が、各社の大株主として次々に姿を現したのである。有価証券報告書には第10位までの株主しか記載されないが、2012年3月末時点で、表に現れただけでも時価総額は約3兆5000億円に達していた。

 以前からこの謎の株主の正体は中国の政府系投資ファンドのCIC(中国投資有限責任公司)ではないかと噂されてきた。
 
 福島の原発事故の直後に、東電株が大暴落し、中国国内で騒ぎになったことがあった。CICは年金基金がベースなので、東電株の暴落で損失を出し、年金支給額が減ると一般の中国人が思い込んだのだ。
 
 その騒ぎを抑えるため、CICの汪建熙・副社長が、「いわれているほど東電株を保有しているわけではない」「一時的な要因に対して大げさになる必要はない」と発言し、それを新華社が報じた。CICが買っていることを認める発言を、中国政府が公認したのである。
 
 これほどの規模で日本株の売買をしていれば、株価に影響を及ぼすのは当然である。
 
 日本の株価は海外投資家の売買に大きな影響を受ける。2012年末に日経平均は1万395円だったのが、2013年末に1万6291円と大幅に上昇した。この間の海外投資家の買越額(買いと売りの差額)を見れば、2012年は2兆7074億円だったのが、2013年は14兆6508億円にまで激増している。海外投資家が買いまくったから株価が上がったわけだが、そこには当然、CICが含まれている。つまり、アベノミクスの株価上昇の影に、中国資本による日本買いがあったのである。
 
 現在のところ、CICは経営に口出しをしない超安定優良株主で、企業にとってはありがたい存在である。しかし、中国企業がグローバルな巨大企業に成長した暁には、順次、日本企業を傘下に収めていくと見て間違いない。アベノミクスの株価上昇で浮かれている間に、中国の日本買い戦略は着々と進んでいるのだ。

※SAPIO2015年3月号

関連キーワード

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン