価格や維持費の安さに加え、高性能化が進んだことで「庶民のクルマ」というイメージも薄れつつある軽自動車。昨年は国内の新車販売台数に占める軽の割合がついに4割を突破し、2年連続で過去最大を記録した。
今年もその人気は健在で、商品力に磨きをかけた“軽スポーツ車”の争いまで起こりそうな兆しを見せている。
あの史上最強の軽自動車が復活する――。3月に発売予定のスズキ『アルト ターボRS』を待ちわびる声だ。「軽くて速い」を売りに2000年まで市販され、全日本ラリー選手権で優勝したこともあるアルトのターボ仕様車『アルトワークス』の再来として、往年のクルマ好きたちの期待感が高まっているのである。
アルト自体は1979年に初代タイプが発売され、昨年末に5年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたスズキの主力ブランド。スズキ広報部に聞くと、現8代目までの累計販売台数は485万台(2015年1月現在)に及ぶという。
しかも、新型アルトにここまで注目が集まっているのは、ハイブリッド車(HV)の最高燃費をも凌ぐ1リットルあたり37.0kmという燃費もさることながら、初代アルトを彷彿させるレトロなデザインが大きな話題となっている点。やはりノスタルジーを感じさせる魅力が満載なのだ。
自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が話す。
「いまの軽自動車はとにかく背を高くして室内空間を広げたデザインのクルマばかりですが、新型アルトは『昔の軽って、こんな小さかったよね』という良い意味での原点回帰をしています。それでいて、内外装に細かな工夫も凝らしているので、これまで軽自動車のデザインに興味のなかったユーザーも、ふと嬉しくなるようなフォルムです」
さて、この新型アルトに「ターボRS」が加わることになるのだが、スズキはまだターボ車の価格やスペックを明らかにしていない。前出の井元氏はこんな予想をする。
「ベーシックタイプの新型アルトは私も試乗しましたが、先代より60kgの軽量化で600kg台を実現させているため、ミニマムなスペックでも速い印象を受けました。
ターボRSはおそらくFF(前輪駆動)でも700kg台に収まっているでしょうし、64馬力あればかなり軽快な走りが期待できます。価格は幅広いユーザーが手の届きやすい150万円前後の設定なら、“遊べるクルマ”としては申し分ないでしょう」
他社ではダイハツが昨年6月に発売した軽オープンスポーツカーの『コペン』が上級クラスで200万円を超え、ホンダが今年4月に発売予定のスポーツカー『S660』も200万円前後の販売価格を想定しているとあって、アルトターボRSのコストパフォーマンスは高いといえる。