大学受験シーズンは今が本番だが、近年は学生の学力低下や大学の存在意義が問われることも増えた。国は「知識偏重から多角的な評価」を掲げて入試制度改革を進めているが、橘木俊詔(たちばなき・としあき)・京都大学名誉教授(経済学)は、学生のサボリを生み出す元凶は日本の大学に居座る給料泥棒の教授たちであり、その延命を許す大学の仕組みにあると喝破する。
年功賃金が基本の大学教員の給与はどれほどのものか。文部科学省の公表する「国立大学法人等の役職員の給与等水準(平成25年度)」によれば、トップは政策研究大学院大学の年収960万1000円。お茶の水女子大学の946万3000円、東京大学の939万6000円と続き、トップ20には一橋大学や京都大学、名古屋大学などがランクインしている。
橘木氏はそうした高給を得ながら、研究・教育水準についてチェックを受けて職を解かれる可能性がゼロに近いことが一番の問題だと指摘する。
「大学では終身雇用が罷り通っている。准教授になれば周りは口を挟まないというのが暗黙の了解で、学問的な実績がゼロでも犯罪などの問題を起こさない限りクビにはできません。
一方、アメリカなどはキャリアの途中でチェックを受ける制度が確立されています。例えば准教授になっても6年間は任期付きの雇用として扱われ、研究能力が不十分と判断されたら職を解かれます。『テニュア・トラック制度』と呼ばれるシステムです。研究成果を単純に数字で判断するのが難しい分野でも、同分野の先達が『生涯研究を続けて成果にたどり着く能力があるか』を厳しくチェックするのです。
日本では学業が優秀だった学生が大学に残り続ける傾向が強いが、学業成績が良くても研究者・教育者として能力があるとは限りません。そうした人物をふるいに掛けるシステムが必要です。
日本の大学は仲間内のムラ社会という色彩が強い。海外に比べて自校出身者を優遇する『純血主義』が多くみられるのは象徴的です。東京大学法学部では、教員に占める自校出身者が約83%にのぼります(『大学ランキング2014年版』、朝日新聞出版より)。伝統校ほど大学間の流動性が非常に低く、互いを厳しく評価するという姿勢もみられません」
※週刊ポスト2015年2月27日号