長い付き合いなのに、なかなか結婚しないカップルが、突然の結婚を決意しました。一体何があったのでしょうか。人とのつながりの大切さを知れるエピソードを32才の主婦・Aさんが語ります。
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母ががんになり、余命半年の宣告が下されました。背中が痛いとは言っていましたが、母はまだ50代でしたし、家事などを普通にこなせていたので、信じられませんでした。
少しでも希望を持ちたくて、セカンドオピニオン、サードオピニオンを受けました。しかし、結果は同じ。次第に体は弱っていき、ついに、ひとりで歩けなくなり、入院することになってしまったんです。
ある時、げっそりと痩せてしまった母が私に、「あなたの花嫁姿を見たい」と言いました。実は私には7年つきあっている彼がいたのですが、結婚はまだ考えていないと言われ、それ以来、私も家族もその話題には触れないようにしていたのです。
嘘で構わないからと、彼とウエディングフォトを撮って、初めて3人でご飯を食べました。でも、そのことを知らない母は彼の手を強く握り、「娘をお願いします」と深く頭を下げ、涙しました。気まずくなった私たちはその夜、ずっと無言でした。
「今日はごめんね」
別れ際、私がそう言うと、彼はいつになく真面目な表情で言いました。 「おれのほうこそ…。なあ、こんな時に言うのがいいとは思わないけど、もしよかったら、本当に結婚しないか」
突然のプロポーズ。でも、私の心は決まっていました。そして、1か月後――身内だけで結婚式を挙げることになりました。特別に外出許可をもらった母は、つらい表情も見せず、車椅子で最後まで参加してくれました。ペンが握れなくなってしまった母に代わって、父が代筆し、読んでくれた手紙。
そこには、病気で迷惑をかけたことの謝罪や、結婚式に参加できた喜び、そして体に気をつけてふたりで末永く幸せになってほしい、そして孫を見るまで生きていたいと書かれていました。父は読みながら泣いていて、私も涙が止まりませんでした。
母が息を引き取ったのは結婚式の1か月後のことでした。「もっと早くおれが決めていれば、孫を見せられたのに…」と彼は後悔していましたが、母のために結婚を決めてくれた彼には感謝しています。そして、この幸せはほかならぬ母が導いてくれたもの。お腹に宿った赤ちゃんを大切にして、生まれたらすぐに母のお墓に見せに行こうと思います。
※女性セブン2015年3月5日号