年末など区切りのよい時期になると、タレントや俳優のCM出演本数が話題になる。本数が多いほど人気を集めている証拠だとみられ、そのとき話題が集まる旬な人ほど数多く起用されるのは今も昔も変わらない。しかし「最近は、演技派俳優の皆さんが起用されることが多くなっています」とCM総合研究所代表の関根心太郎さんは分析する。
「複数のCMに起用されやすい男性タレントといえば、ここ10年ほど嵐、SMAPなどジャニーズのアイドルや、向井理さんのようなさわやかなイケメン俳優でした。加えて数年前からは演技派俳優の起用が目立ち、好感度も高いのが新しい特徴です。たとえば2013年に『半沢直樹』が話題になった堺雅人さんや香川照之さん、出演ドラマが必ず話題を呼ぶ阿部寛さんや西島秀俊さん、映画を中心に活躍する役所広司さんや山田孝之さんなどがあげられます」
殺到するファンによってパニック状態が起きるような人気ではないが、役柄を完璧に演じられる俳優のCM出演は、企業側がCMに求めるものとぴったり合う。それというのも、CM出演者には伝えたいイメージや商品を伝える優秀なメッセンジャーの役割を果たしてほしいからだ。
「徹底的に演じることのできる俳優は、視聴者にそのイメージを強烈に残すので優秀なメッセンジャーといえます。今は視聴者も見抜く力が長けていますから、ちょっとやそっとの演技力では目を留めてくれません。その点、演技派俳優ならばしっかり人の目を釘づけにできます。
昨年度のCM好感度ランキング(2013年11月度~2014年10月度)で5位の『ジョージア』のCMに出演した山田孝之さんは、一人で何役もカメレオンのように演じ分け強烈な印象を与えました。一方で本人のキャラクターはそれほど知られていない。いつもそのときの役柄のイメージが強いぶん、本人についてはミステリアスというのも演技派俳優ならではです」(前出・関根さん)
その演じる力が評価されて複数のCMへ起用されているのだが、最近では演技派俳優たちが「本人役」として出演することが増えている。『ダイワハウス』での役所広司や唐沢寿明、そして山田孝之も2月19日から放送されている『プレイステーション4』に「本人」として出演している。
「それまでのCMやドラマ、映画などでみてきた『役』とは違った切り口は大きなギャップを生み出し、見る人に新鮮な印象を強く与えます。そのときによって様々な役になりきったり、さらに本人役でも出演したり、複数の企業からCMに起用される人は同性からの支持が高いのも特徴です。
放送が始まったばかりのCMに本人役で出演している山田孝之さんも、昨年度の調査結果をみると20代、30代の男性からの好感度が高い。イケメン男性にとって同性からの支持を集めるのは難しいところですが、若手ながら山田さんはその難関を突破しています。最近は綾野剛さん、妻夫木聡さん、松坂桃李さんなど20代、30代で実力と好感度を兼ね備えた俳優が多いので、これからの活躍が楽しみですね」
(前出・関根さん)